「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

我に返ったあとの消費の「適量」

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2011年4月22日(金)

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 東京ディズニーランドの再開を伝えるニュースは、なんだか奇妙だった。
 テレビの中の人たちの伝え方が偏向していたわけではない。むしろ、ニュースを受け止める私の側の感じ方に、微妙な変化が生じていたということなのだと思う。

 ニュースデスクは、明るい話題に飢えている。視聴者も同様だ。震災後40日を経て、多くの国民は、復興につながる明るいニュースを希求している。そんな中でもたらされたディズニーランド再開の話題は、うってつけのグッドニュースになるはずだった。

 が、その、誰もが待っていたはずの福音は、いざ形になって届いてみると、スタジオの中に、なんだか白々しい感じの後味を残して通り過ぎて行った。
 ミッキーマウスたちの軽妙なダンスを伝える取材VTRを眺めながら、私は、
「ミッキーよ。お前は神妙な顔ができないのか?」
 と、お門違いである旨は承知しつつも、どうしてもそう思わずにいられなかったのである。

 私が見た民放のニュースワイド番組は、一組の若夫婦にスポットを当てることで、ディズニーランド再開の一日をレポートしていた。
 登場したのは、30代とおぼしき都内在住のカップル。ともにディズニーが大好きで、震災があった日も東京ディズニーリゾートで落ち合う予定だったのだという。

 カメラは、ランド再開当日に駆けつけた彼等の表情を追う。
「ミッキーぃー! 会いたかったぁあー」
 と叫ぶ彼女の横顔をアップでおさえた後、カメラは引きの画面で、ミッキーとミニーが力いっぱいに手を振る様子を紹介する。涙ぐむ妻。歓声をあげる子供たち。感動的な絵柄だ。

 が、私は、シラけていた。
 いや、被災地に配慮してファンタジーは自粛すべきだとか、娯楽は後回しにしろだとか、そういう堅苦しいことを言おうとしているのではない。

 でも、やっぱり、ダメなものはダメだ。私はついていけなかった。
 思うに、これは一時的な気分の問題ではない。
 ああいう規模の災害に遭遇すると、ものの見方の根本のところが変わってしまう。
 少なくとも「娯楽」についてはそうだ。震災の前と後とでは、こちらの心構えに微妙な違いが生まれている。

 「パラダイムシフト」という言葉を使うのは、大げさかもしれない。でも、震災の前までは他愛なく笑って受け止めていられた様々なものが、受容できなくなっている。ということは、やはりこれは、気分の変動というよりは、人生観の変容に近い何かが起こっているということなのだ。

 たとえば、お笑い芸人のうちの幾人かは、私にとって、向こう2年ぐらいは顔を見たくない存在になってしまっている。震災前から、特に歓迎して見ていたわけではないが、それでも、これほどまでにうとましく感じてはいなかった。そう思うと、この違いは大きい。これから先、色々な分野でキャスティングが少しずつ変わってくるかもしれない。

 今回は、娯楽について書きたい。
 ゴールデンウィークも近いことだし、行楽の予定をどうしたものか思案に暮れている人も多いと思うだからだ。
 どのように過ごすにしても、この機会に、休日を楽しむことの意味について考えてみるのは無意味なことではないはずだ。

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著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

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