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仕事が好調な時は『身体のいいなり』 ~乳癌がもたらした体質改善の快楽

2011年4月25日(月)

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身体のいいなり』内澤旬子著、朝日新聞出版社1365円

 古代中国や平安期の日本では、災害と病を分ける発想がなく、等しく自然のもたらす災厄とみなした。病は天地の然らしめたものであり、不意打ちの痛棒に備えようとも災いは降り掛かる。起きるべくして起きること自体を避けようがない。

 現代に生きる人間には、馴染めない考えだろう。予告なしに起きる自然災害はともかく、たいがいの病気は技術によって封じるなり、適切な処置を施すことができると考えられるからだ。

 しかし、命にかかわる病に罹ったときはどうか。災いがどこから来たのか。ほかでもない自分がなぜ選ばれたのか。どこへ運び去ろうとするのか。条理に従って考えたところで、煩悶は生まれても光明をもたらさない。

 優れたソリューションによってワンストップに問題を解決することが、世事においてどれほど尊ばれようとも、我が身に起こる災いは、一気通貫に解決しない。それが理解される時、自分のものだと思っていた身体が、意のままにならないものとしてせり上がってくる。

闘病記を読みたがる理由が分からない

 本書は著者が38歳で乳癌と診断され、癌の切除手術、さらには乳腺全摘出から乳房再建した過程を描いている。冒頭、こう述べる。

〈人間なんてどうせ死ぬし、ほっとけばいつか病気に罹る可能性のほうが高い生き物なのに、なぜみんな致死性の病気のことになると深刻になり、治りたがり、感動したがり、その体験談を読みたがるのかが実のところ自分にはよくわからないのだ〉

 つまり本書は、刻苦精励の果てに病に克つというサクセスストーリーを謳う内容とは趣きを異にするということだ。そして、いわゆる闘病記について、著者が〈自分にはよくわからないのだ〉と述懐する根底には、身体の不調と社会に出てからの貧乏という、成功譚と無縁のどうにもならなさ加減と長らくつき合ってきた経緯が影響してそうだ。

 まず身体だが、〈生まれてからずっと、自分が百パーセント元気で健康だと思えたためしがなかった。胃酸過多、腰痛、アトピー性皮膚炎、ナゾの微熱、冷え性、むくみ、無排卵性月経など、「病気といえない病気」の不快感にずっとつきまとわれて来た〉

 貧乏についてはどうか〈家賃二万円を友人たちと折半していた極限の貧乏暮らし〉が、いかに成ったかと言えば、著者の持ち味である細かく描き込むイラストは時間がかかる。しかし原稿料に反映されない。綿密に仕事をすればするほど損を被る。

 30代になってから結婚し、都内の標準的な物件に住むようにはなったものの〈収入はジリ貧になっていく〉という始末で、何をやっても〈一人前の収入が得られない〉。同時期にアトピーがひどくなったものの、治療に費やす余裕もない。

 自分の身を縁取るのは、浸潤し続け、塞がらない傷のように口を開けた不快感と貧困。のっぴきならない状況だけが残る暮らしであれば、決定的な破局すら解決に思えてくるのだろうか。

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