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多くの利点が存在する連邦制度

配分する[11] ――正義について考える【22】

2011年5月19日(木)

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連邦制

 このようにアメリカでは権力の分立は、国家のさまざまな部門のあいだで三権分立を確立すること、さらに理想的な国家を目指して、大統領、上院、下院の三つの権力のバランスをとることで実現された。ハミルトンが語っているように、これは近代の産物だった。ところでアメリカ合衆国の憲法の制定の際に主として議論になったのはこうした権力の分立ではなかった。権力の分立についてはほとんどの論者が同意していたのである。

 憲法制定の際に議論の中心になったのは、連邦政府と州政府のあいだの権力の分配をどうするかという問題だった。連邦政府に植民地同盟とは異なる形で強い権力を与える必要があることは明確だったが、その権力がどのようなものであるべきかについては同意はなかったのである。

モンテスキューに依拠した連邦制への異論

 連邦制に反対する論拠の一つは、モンテスキューが共和国が大きくなると、内部的な原因で崩壊すると語っていたことである。モンテスキューは「共和国は小さければ外国の力によって滅び、大きければ内部の欠陥によって滅びる。この二重の不都合は、民主政をも貴族政をも、良いものであれ悪いものであれ、等しく害する。この害悪は事柄自体の中にあり、それを治すことのできるような形態はない」[1]と指摘していた。

 ハミルトンは、この理論に基づいて、すでに成立している州のうちでも大きな州を分割すべきだという議論があるのは、「このジレンマに気づいたからなのか、大胆にも、大きな邦の分割を望ましいこととして示唆するものもいる」[2]と指摘する。そしてそのようなことをすれば、「つまらない役職を多数つくることによって、個人的な陰謀」[3]を増やすだけだと退ける。

 モンテスキューは大きすぎる共和国の宿命を指摘しただけである。ハミルトンはモンテスキューの真意は「加盟する邦の規模を小さくすることを強調しているのであって、別に加盟邦すべてが一つの連合政体のもとに包含されることに反対しているのではない」[4]と指摘する。実際にモンテスキューはこのジレンマを解決するために「連合共和国」という方式を提案していた。これは「共和政体のもつすべての内部的な利点と、君主政のもつ対外的な力を兼ね備えた」[5]政体である。

 この政体は共和国の資源を統合することで、対外的には強力になる。さらに対内的には、一つの共和国においてあまりに強力な力を発揮する者がいて、権力を簒奪しようとしても、他の共和国がこれを妨げるだろう。一つの共和国で叛乱が起きても、他の共和国がこれを鎮圧するだろう。一つの共和国が滅びても、他の共和国が残っているだろう、とモンテスキューは指摘する。

 アメリカ合衆国はこの連合共和国の方式を採用する。そして「これに加わった新加盟者によって拡大されることもある」[6]と考えるのであり、これは西部を開拓してゆこうとするアメリカ合衆国に最適な政体となるのである。

連邦の対外的な利点

 ハミルトンたちは、この連邦制の利点を対外関係と対内関係に分けて指摘する。対外関係については、個々の一三の州が個別の外国と交渉する方式には、多くの欠点がある。第一に、州がイギリスやフランスのような大国と交渉するときには、軽蔑されることが多いだろう。そして「他国の敵意や軽蔑を招くような立場」[7]に立たされるときには、戦争につながりやすいだろう。絶対専制君主は、軍事的な野心や復讐心など、「個人的な目的のために戦争を起こすこともまれではない」[8]からである。

 さらに軍事的にも、それぞれの州が個別に軍隊を維持していたならば、効率が悪いだろう。これらの政府がどんな軍隊を募集し、維持できるであろうか。そもそも「艦隊を保有することなど望みうるであろうか」[9]。さらに一つの州が攻撃された際に、「他の政府はその救援に馳せ参じ、その防衛のためにみずからの血を流しみずからの金を投じるであろうか」[10]。また救援が行われたとしても、その資金はどう調達し、だれが指導者になるか、などの困難な問題が発生する。

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「多くの利点が存在する連邦制度」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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