「人生の諸問題」

「いい映画」は、1年あればほぼ全部見られるよ

語り合おう、あの時に見たあの映画「青春の5本」その1

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2011年5月30日(月)

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 お待たせしました。先行き不透明、悩み多き時代に「ガラパゴスでいいじゃない!」と吹っ切った姿勢で臨む?「人生の諸問題、青春シリーズ」、再開です。今回からは好評を博した読書編「青春の5冊」に続き、映画編「青春の5編」をお送りします!

小田嶋 東日本大震災の後、TVのコマーシャルがACジャパン一色になったでしょう。

―― あまりに何回も繰り返されるので、苦情が殺到したという。

小田嶋 あれ、TUGBOATがかかわってなきゃいいな、と思ってたのね、俺。

 かかわってないですよ。

小田嶋 いや、もし、かかわっていたら、この先すごく話題に困るな、って。

 僕たちにも、震災後にみんなを励ますような広告を作ってくれませんか、という依頼はあったけど、そんなの、励ませないですよ。自分が被災していたら、ほかの人たちにも届くような言葉って、もしかしたらあり得たかもしれないけど、僕の立場は結局、やじ馬じゃないですか。被災していない連中が、被災した人たちに向かって何かを言って励ますなんて、できないと思ったね。

広告主の名前は、出さないわけにはいかない

小田嶋 そういう思いは別にして、タレントたちがノーギャラで次々と登場して坂本九の「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」を歌い継いでいく、というサントリーのCMなんかは、仮にすごく歌のうまいやつが5〜6人で歌ったら、いいCMになった可能性はあると思ったよ。矢沢永吉とか、あの中に結構、歌える人が3〜4人はいたでしょう。まあ、マッチとかが出てきちゃったときの違和感はすごいと思いましたけど。

 あれ、タレントの方も断りにくい手紙が来たんだろうなあ、って(笑)。ただ、ああいう手法で感動的なCMを作ったとしても、広告である以上は最後の画面にクライアント名が出ますよね。すごくいいことを言っても、最後に「サントリー」なり何なりがやっぱり出ちゃうから、うわっ、こんなときにも好かれたいのかな、って思われるリスクもある。たとえクライアントが、こういう場合は社名ははずしてくれ、と言ったとしても、広告枠で流す以上、番組じゃないから入れないとだめなんです、ということで。

小田嶋 そこは広告というよりも放送業界のルールだよね。

 そのルールからいえば、クライアントが買った時間は、どこの誰が言っているかを明記しないとだめだ、というのがあるんですよ。でも逆にいえば、広告のプロなら、どんなに心に染みそうなCMを作ったとしても、これ、最後にクライアント名が出るよな、って、そうなるのは分かっていたはずですけどね。

小田嶋 多分、作り手はそこまで計算済みなんだろうけど。まあ、実際、じーんと来たばかりに、最後に企業の名前が出てきたときの違和感というのは、ありましたね。

 ディズニーランドだけじゃないですか、震災時に顧客コミュニケーションが成功したのは。だって、あそこ、被災者だからね。

小田嶋 そもそもがね。

 震災発生時も、発生後も、ディズニーランドの対応は素晴らしかったらしいね。入園者たち全員を1人のけが人も出さずに安全なところに避難させて、食事を配って、情報も伝えて、と。

小田嶋 しかもアルバイトや従業員、というか、あそこはキャストと呼ぶそうだけど、キャストがまさに役割に成り切って、「僕たちフェアリーがいるから、きみたちは安心してくれたまえ」といった芝居を貫いたんでしょ。

 だから、自分たちが被災して、直すから、また来てください、というディズニーランドのメッセージだけは届いた気はしますよね。かといって「ミッキー、会いたかった〜」なんて、いうのは、これはあり得ない、と思ったけどね。

小田嶋 テレビのニュースだかでやっていたでしょう。再開したディズニーランドに出かけた30歳すぎの子供がいない夫婦が出てきて、「ミッキー、会いたかった〜」って、泣いているのよ。

 おかしいよね。

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著者プロフィール

岡 康道(おか・やすみち)

岡 康道

クリエイティブ・ディレクター、CMプランナー。
1956年生まれ。80年早稲田大学法学部卒業後、電通に入社。CMプランナーとしてサントリー「BOSS」「南アルプスの天然水」、JR東日本「その先の日本へ。」など、時代を代表するキャンペーンを手がける。97年、JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞。
99年に日本最小最強のクリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を川口清勝、多田琢、麻生哲朗とともに設立。主なクライアントに、サッポロビール、大和証券、富士ゼロックス、リクシル、NTT東日本、大和ハウス、NTTDoCoMoなど。TCC最高賞、ADC賞、ACC賞、ニューヨークADC賞、クリオ賞など受賞多数。TCC会員、ニューヨークADC会員。現在、雑誌ポータルサイト「magabon」にて、エッセイ連載中。近著に「ノンタイトル」(電子書籍)

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト。
1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。国内外の都市開発、デザイン、トレンド、ライフスタイルを取材する一方で、時代の先端を行く各界の人物記事に力を注ぐ。『アエラ』『朝日新聞』『日本経済新聞』『日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)』などで執筆。著書に『セーラが町にやってきた』(プレジデント社/日経ビジネス人文庫)、『ほんものの日本人』(弊社刊)、『新・都市論TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(集英社新書・隈研吾氏と共著)『「オトコらしくない」から、うまくいく』(佐藤悦子氏と共著・日本経済新聞出版社)など。

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

人生の諸問題

日本語は今や、ウェブ上で全世界でもっとも流通している言語だといわれるまでになった。しかも、読む人間より、書く人間の方が圧倒的に多いのだという。それほどまでに人々が文章を書いている一方で、相手に何かを伝えることの難しさは、むしろ増えているように思える。「誰もが発信者」、そんな史上初のシチュエーションを迎えた今、いったい私たちの「コミュニケーション」はどこに行くのだろう。広告の世界でクリエイティブディレクターとして活躍する岡康道氏と、コラムニストの小田嶋隆氏が、高校時代の同級生という縁から始まった「伝達」について、ゆるゆると語り尽くす…はずだったのだが?

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