• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

パニック回避の代わりに彼らが失ったもの

2011年5月27日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 東京電力は、今月の15日、福島第一原子力発電所の1号機について、以下の発表をした。すなわち、15日現在の暫定的な解析結果によれば、1号機は、地震発生から16時間後には燃料の大部分が溶融・落下する、いわゆる「メルトダウン」の状態に陥っていた可能性が高いというのだ。

 続いて、24日には2号機と3号機がメルトダウンしていたことも認めている。東電がまとめた報告書によれば、1~3号機のすべてで、燃料棒はほぼ完全に溶融・落下し、原子炉圧力容器には穴が開いている。1号機と2号機については、格納容器にも損傷が及んでいる可能性がある。なんということだろう。

 メルトダウンが起こってから、それを確認するまで2カ月以上が経過していた計算になる。

 なるほど。
 東電が、震災以来、事態を把握していなかったのだとすると、この2カ月の間、われわれは行き先不明のバスに乗っていたことになる。計器はめちゃめちゃで、ドライバーは意識不明のままハンドルの上に突っ伏していたわけだ。

「方向とスピードはわかりませんが、走行中であることは確認済みですのでご安心ください」
 と、バスガイドは言う。私は安心できない。当然だ。
「飛び降りると怪我をしますよ」
 そうかもしれない。でも、乗っていれば、いずれ何かに衝突するんではないのか?
 いや、彼らとて、いくらなんでも、ある程度は状況を把握していたはずだ。そう考えるのが自然だ。だって、専門家なんだから。ということは、結局、東電および政府の事故対策本部は、事態の収拾をはかりながら、メルトダウン発表のタイミングを推し量っていた。そう考えた方が、多少は安心できる。
 でも、それはそれで別の問題が生じる。
 この前提だと、東電はウソをついていたことになる。でなくても情報を隠蔽していた、と、これはこれで後味が悪い。われわれは、今後、彼らの発表について、すべて裏読みせねばならなくなる。

 本当のことを言うと、私は、自分が驚いていないことに驚いている。
「メルトダウン?」
 発表を聞いた時、私は、落ち着いていた。
「それより松坂のヒジは大丈夫なのか?」
 ぐらいの力加減だ。

 もしかして、狙いは、ここにあったのだろうか。
 つまり、彼らは、国民の危機意識が麻痺するタイミングを待っていたわけだ。
 事実、「驚く」ということに関する私の閾値は、2カ月前に比べれば1兆倍ほどに上昇している。
「ほう。原発の港湾内に滞留している汚染水が14兆ベクレル、と」
 私は驚かない。
「それより浦和レッズの5試合連続未勝利はどこまで続くんだ?」

 人は驚き続けることができない。
 びっくりし続けた人間はじきにぐったりする。

コメント112

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「パニック回避の代わりに彼らが失ったもの」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

もっと事業を効率化して、料金を下げて、消費者に貢献しないと業界はだめになってしまう。

和田 眞治 日本瓦斯(ニチガス)社長