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正義を守るための「官職」と「財産」の配分とは

配分する[最終回] ――正義について考える【24】

2011年6月2日(木)

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財産と官職の配分

 さて、だいぶ長くなった「配分する」だが、今回はこのテーマの最後として、権力以外の財の配分について考えてみたい。ケーキの配分と権力の配分を結びつけたハリントンは、『オシアナ』において、国家をたんに権力の配分でけではなく、財産と官職の配分によっても定義していた。

 ハリントンは、土地がどのような比率で配分されているかで、その国家の性質が決まると考える。「一人の人間が領土の唯一の所有者であるか、あるいはたとえば全領土の四分の三といった割合で、国民の所有地を上回る土地を領有する」[1]ならば、それは絶対王政である。もしもそのバランスが暴力によって維持されているならば、それは専制である。

 もしも少数者、すなわち貴族階級が、あるいはまた貴族階級と聖職者たちが、土地のすべてを領有するか、前の場合と同じような割合で国民の所有地を上まわる」[2]ならば、それは貴族政治である。それが暴力によるならば、それは寡頭制である。

 もしも全国民が土地所有者であり、また少数者ないし貴族階級に属する者のうちで、だれも単独あるいは共同で、国民一般が所有する土地とのバランスを失うほど広大な土地を領有することがないように土地が細分されているならば」[3]、その国はコモンウェルスである。それが暴力によるならば、それは無政府制である。

 ハリントンは、この種の土地の均衡を維持する法律を「農地法」[4]と呼ぶ。そして「平等な農地法」とは、「小数者ないし貴族階級に属する一人ないし何人かの者が、その土地所有によって民衆全体よりも強大な勢力をもつにいたることのないように土地を配分することになり、土地所有の均衡を確立し、維持するような永久法」[5]である。ハリントンが農地を平等に配分することで正義が守られる平等な農地法を施行する「コモンウェルス」を理想としていることは明らかだろう。

官職の配分

 ハリントンはまた農地という下部構造だけでなく、官職という上部構造においても平等が実現される必要があると考えている。官職を輪番制にすることで、権力が特定の人に握られるのを防ぐことができる。「平等な官職輪番制とは、統治における平等な交替であり、すなわち平等な休職期間を置いて、官職につく期間を適当に制限し、これにより全員を一部分ずつ政治に参与させ、民衆の自由選挙によって順次交替するようにする制度である」[6]

 この官職は在職期間が長くならないようにする必要があり、民衆は自由選挙によって、無記名投票で役人を選挙するのである。記名投票では、「敵に対する恐怖や友人にたいする遠慮から、人間の自由が曲げられることになる」[7]からである。

 このようにして正義の理念に適う平等な国家とは、「平等な農地法の上に確立され、上は上部構造たる三つの機関、すなわち審議および定義を行う審議院、議決する民会、民衆の投票札により投票での平等な官職輪番制に従って執行する行政部にいたる政体をもっているものである」[8]

コメント1件コメント/レビュー

「配分」の正義のなかで、現代資本主義の市場原理にもとずく配分は正義なのか否か。それはあくまで【機会均等である。出自による貧富の差は完全ではないにしろ政府が是正している。従って競争の結果としての勝者敗者は公平な正義である。】としてよいのか、【一度勝者となったものはその後勝ち続けることができもはや公平ではない。】とすべきなのかといった話題に移る前に「配分」が終わってしまったような気がします。市民社会となってから以降の話題も多く、資本主義に特徴的な正義も無いということかもしれませんが、資本主義や市場原理主義に正義はあるのでしょうか?(ちょっと無茶ですね)(2011/06/02)

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「正義を守るための「官職」と「財産」の配分とは」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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「配分」の正義のなかで、現代資本主義の市場原理にもとずく配分は正義なのか否か。それはあくまで【機会均等である。出自による貧富の差は完全ではないにしろ政府が是正している。従って競争の結果としての勝者敗者は公平な正義である。】としてよいのか、【一度勝者となったものはその後勝ち続けることができもはや公平ではない。】とすべきなのかといった話題に移る前に「配分」が終わってしまったような気がします。市民社会となってから以降の話題も多く、資本主義に特徴的な正義も無いということかもしれませんが、資本主義や市場原理主義に正義はあるのでしょうか?(ちょっと無茶ですね)(2011/06/02)

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後藤 忠治 セントラルスポーツ会長