「人生の諸問題」

「ギャラは俺のスイス口座に」と言うために必要な覚悟

語り合おう、あの時に見たあの映画「青春の5本」その3

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2011年6月13日(月)

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「青春の5本」をめぐる、コラムニスト×広告プランナーの同級生対談第3回。ン億円のギャラを取るハリウッドスター、欧州の大富豪、映画の中の富と貧しさ、などなど、お金、働くこと、そして帰属意識まで話は広がります。

―― ダンディなやさ男で、スウィーティで、アダルティで、酸いも甘いも分かってる風な、上司にしたいナンバーワンな、だけど不倫の匂いがしてくるぞ、というようなハリウッド俳優…って、一体、誰のことでしょうか。

(ダンディなやさ男が登場した前回から読む)

 それ、大人の事情で、ここで名前を明かすことはできないんだけど、ン億円ですよ。実に制作費の3分の2がギャラ。

一同 えーっ。

小田嶋 この人、もともと大部屋出身だよね。テレビ俳優出身で偉くなっちゃったという。

 それが今や1日ン億円ですよ。

小田嶋 素晴らしい仕事だね。

 朝から撮って、夕方に終わって、さようならって。

小田嶋 俺なんか腎臓を売っても、そんな金にならない。

 ミラノかどこかからガールフレンドを連れてきてさ。でも、いい人。

小田嶋 そりゃ、それだけのギャラをもらえば。

 たいていは機嫌のいい人になるよね。でも、もともと大部屋から出た苦労人だから、話も通じやすいんだよ。例えば日本の有名俳優たちは、CMには出るけれど、商品を持つ手のアップなんかは絶対にやらないですよね。でも彼は、ああ、いいよ、俺がやるから、って協力的でもあるんだよ。

面倒な人は乗せて転がせ

―― いい人ですね〜。

 いい人。いい人だけどさ、それだけもらえば多少はやるだろう。何だってやるよね。

小田嶋 そりゃ、いい人になりますよね。

クリエイティブディレクター 岡 康道氏(写真:大槻純一、以下同)

 クライアントの乗せ方も、すごい上手。挨拶をした後に、役員の女性のスーツをすぐ褒めるの。その役員は直前まで、「イヤだと言っても、商品は絶対に手に持たせろ」と言っていたのに、褒められた途端に、「いいかな、持たなくても」だって。

小田嶋 だから世界のホストみたいなものだよ。

 あいつにスーツ、褒められたら、女の人、どうする?

―― ええ〜〜っ、もう、死んでもいいかも〜〜っ(まじ)

男性陣 (鼻白む)

小田嶋 そいつとはちょっと違うけど、フランスとかに行くと、遊んで食っているやつって、いくらでもいるでしょう。

 そうだよ。「太陽がいっぱい」(1960年、フランス・イタリア映画 ルネ・クレマン監督)にもたくさん出ていたよ。

小田嶋 アラン・ドロンは貧しい側で、金持ちの側のあれを狙った人間の役だったよね。

 そうそう。

―― アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」は、60年代にご覧になっていましたか。

小田嶋 あれは子供の時分に、「日曜洋画劇場」で観ましたね。

 「男と女」とか「シェルブールの雨傘」とか。

解説のほうが面白かった(こともある)

小田嶋 あの辺りはだいたい淀川長治さんのご案内で観ていますよね。淀川さんが、「アラン・ドロンのアキレス腱がきれいでしたね」とか何とか、ものすごくビビッドなご意見を言ってさ、このおじさんはなかなかすごいことを言う人だな…というのを子供心に感じながら観てました。

―― アキレス腱という目の付け所が。

 変態だよね(笑)。というか、お前、何でそんなこと覚えているんだよ。それ自体が変態じゃん。

小田嶋 だから俺にとってヨーロッパの名画って、淀川さんとセットですよね。

 そうそう、セットなの。映画だけじゃないんだよ、淀川さんが面白いんだよ。

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著者プロフィール

岡 康道(おか・やすみち)

岡 康道

クリエイティブ・ディレクター、CMプランナー。
1956年生まれ。80年早稲田大学法学部卒業後、電通に入社。CMプランナーとしてサントリー「BOSS」「南アルプスの天然水」、JR東日本「その先の日本へ。」など、時代を代表するキャンペーンを手がける。97年、JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞。
99年に日本最小最強のクリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を川口清勝、多田琢、麻生哲朗とともに設立。主なクライアントに、サッポロビール、大和証券、富士ゼロックス、リクシル、NTT東日本、大和ハウス、NTTDoCoMoなど。TCC最高賞、ADC賞、ACC賞、ニューヨークADC賞、クリオ賞など受賞多数。TCC会員、ニューヨークADC会員。現在、雑誌ポータルサイト「magabon」にて、エッセイ連載中。近著に「ノンタイトル」(電子書籍)

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト。
1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。国内外の都市開発、デザイン、トレンド、ライフスタイルを取材する一方で、時代の先端を行く各界の人物記事に力を注ぐ。『アエラ』『朝日新聞』『日本経済新聞』『日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)』などで執筆。著書に『セーラが町にやってきた』(プレジデント社/日経ビジネス人文庫)、『ほんものの日本人』(弊社刊)、『新・都市論TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(集英社新書・隈研吾氏と共著)『「オトコらしくない」から、うまくいく』(佐藤悦子氏と共著・日本経済新聞出版社)など。

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

人生の諸問題

日本語は今や、ウェブ上で全世界でもっとも流通している言語だといわれるまでになった。しかも、読む人間より、書く人間の方が圧倒的に多いのだという。それほどまでに人々が文章を書いている一方で、相手に何かを伝えることの難しさは、むしろ増えているように思える。「誰もが発信者」、そんな史上初のシチュエーションを迎えた今、いったい私たちの「コミュニケーション」はどこに行くのだろう。広告の世界でクリエイティブディレクターとして活躍する岡康道氏と、コラムニストの小田嶋隆氏が、高校時代の同級生という縁から始まった「伝達」について、ゆるゆると語り尽くす…はずだったのだが?

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