「青春の5本」をめぐる、コラムニスト×広告プランナーの同級生対談第3回。ン億円のギャラを取るハリウッドスター、欧州の大富豪、映画の中の富と貧しさ、などなど、お金、働くこと、そして帰属意識まで話は広がります。
―― ダンディなやさ男で、スウィーティで、アダルティで、酸いも甘いも分かってる風な、上司にしたいナンバーワンな、だけど不倫の匂いがしてくるぞ、というようなハリウッド俳優…って、一体、誰のことでしょうか。
(ダンディなやさ男が登場した前回から読む)
岡 それ、大人の事情で、ここで名前を明かすことはできないんだけど、ン億円ですよ。実に制作費の3分の2がギャラ。
一同 えーっ。
小田嶋 この人、もともと大部屋出身だよね。テレビ俳優出身で偉くなっちゃったという。
岡 それが今や1日ン億円ですよ。
小田嶋 素晴らしい仕事だね。
岡 朝から撮って、夕方に終わって、さようならって。
小田嶋 俺なんか腎臓を売っても、そんな金にならない。
岡 ミラノかどこかからガールフレンドを連れてきてさ。でも、いい人。
小田嶋 そりゃ、それだけのギャラをもらえば。
岡 たいていは機嫌のいい人になるよね。でも、もともと大部屋から出た苦労人だから、話も通じやすいんだよ。例えば日本の有名俳優たちは、CMには出るけれど、商品を持つ手のアップなんかは絶対にやらないですよね。でも彼は、ああ、いいよ、俺がやるから、って協力的でもあるんだよ。
面倒な人は乗せて転がせ
―― いい人ですね~。
岡 いい人。いい人だけどさ、それだけもらえば多少はやるだろう。何だってやるよね。
小田嶋 そりゃ、いい人になりますよね。

岡 クライアントの乗せ方も、すごい上手。挨拶をした後に、役員の女性のスーツをすぐ褒めるの。その役員は直前まで、「イヤだと言っても、商品は絶対に手に持たせろ」と言っていたのに、褒められた途端に、「いいかな、持たなくても」だって。
小田嶋 だから世界のホストみたいなものだよ。
岡 あいつにスーツ、褒められたら、女の人、どうする?
―― ええ~~っ、もう、死んでもいいかも~~っ(まじ)
男性陣 (鼻白む)
小田嶋 そいつとはちょっと違うけど、フランスとかに行くと、遊んで食っているやつって、いくらでもいるでしょう。
岡 そうだよ。「太陽がいっぱい」(1960年、フランス・イタリア映画 ルネ・クレマン監督)にもたくさん出ていたよ。
小田嶋 アラン・ドロンは貧しい側で、金持ちの側のあれを狙った人間の役だったよね。
岡 そうそう。
―― アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」は、60年代にご覧になっていましたか。
小田嶋 あれは子供の時分に、「日曜洋画劇場」で観ましたね。
岡 「男と女」とか「シェルブールの雨傘」とか。
解説のほうが面白かった(こともある)
小田嶋 あの辺りはだいたい淀川長治さんのご案内で観ていますよね。淀川さんが、「アラン・ドロンのアキレス腱がきれいでしたね」とか何とか、ものすごくビビッドなご意見を言ってさ、このおじさんはなかなかすごいことを言う人だな…というのを子供心に感じながら観てました。
―― アキレス腱という目の付け所が。
岡 変態だよね(笑)。というか、お前、何でそんなこと覚えているんだよ。それ自体が変態じゃん。
小田嶋 だから俺にとってヨーロッパの名画って、淀川さんとセットですよね。
岡 そうそう、セットなの。映画だけじゃないんだよ、淀川さんが面白いんだよ。
俳優。ジョー○・○ルーニー。違います?(2011/06/13)