「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

卓袱台返して菅笠ひとり旅

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2011年6月17日(金)

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 イタリアで6月の12日から13日にかけて行われた原子力発電所の再開の是非を問う国民投票は、94.05%という圧倒的な反対票を集めて幕を閉じた。結果を受けて、ベルルスコーニ首相は、原発との決別を約束している。

 わが国では、自民党の石原伸晃幹事長が、翌14日の記者会見で、この件について以下のように述べた。
「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは、心情としては分かる」
 驚くべき言及だ。

 石原さんが「ヒステリー」という言葉を、「興奮・激情により冷静な判断力を喪失している状態」という辞書に載っている語義そのままの意味で使ったのだとすると、彼は、イタリア国民を「愚民」呼ばわりにしたことになる。これはよろしくない。
 いくらなんでも、国政の中枢にある人物が、公式の会見の場で、こんな失礼な発言をカマして良いはずがない。幹事長は、言葉の選び方を誤った。おそらく、石原さんは、大きな数字を目の当たりにして、単独ヒステリー状態に陥っていたのだと、そう考えてさしあげるのが彼のためであり、日本のためでもあると思う。

 今回は、原発について触れざるを得ない。そういう雲行きだ。
 原発は、イタリアにおいてそうであったように、わが国でも、最も主要な国民的関心事になっている。当然だろう。当事国なのだから。

 原発の是非をめぐる議論は、事故発生以来、ほとぼりがさめるどころか、日に日に過熱して現在に至っている。おそらく、この問題は、今後、郵政民営化の時と同じようなワンイシューの争点になるだろう。
 つまり、自民VS民主や、地方分権or中央集権、あるいは小沢対反小沢といった従来からの対立軸は、すべて原発の是非に包摂されてしまうということだ。
 で、その国論を二分する葛藤の中心に菅首相がいる。
 不思議なめぐりあわせだ。

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著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

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