「フクシマの視点」

国や県より信頼できるのは「計測器」

「もうノイローゼになりそう」伝わらない母親たちの叫び

  • 藍原 寛子

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2011年7月13日(水)

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 「今日、子どもを持つ同僚が『毎日放射線のことが心配で仕事が手につきません。避難が決まったら、仕事を辞めたい』と言ってきました。それを引き留めることはできません。昨夜は、別のママから『転々と避難して、もう疲れました。どうしたらいいか分かりません』と相談を受けました。小さい子どもを持つママ達は、みんなこんな状態です。新聞やニュースを見ても、苦しんでいる様子は取り上げられていないし、放射線の心配は忘れられているのかと思うくらいです。お願いです。こんな状況、ママ達のこころを、全国に、そして世界に伝えて下さい」

「福島は、見捨てられている気がする」

 東日本大震災から4か月。

 郡山市で看護師をしている友人から、悲痛なメールを受け取った。このメールだけではない。特に子どもを持つ母親から、同じ訴えを聞くようになった。

「新聞やテレビが報じていない事実を、私たちに知らせて」。
「今、福島県はどれだけ危険なのか、真実を教えて」。
「避難した方がいいのかどうか、迷っている」。

 そして、最後に「福島は、見捨てられている気がする」と。

 連日、福島第一原発の状況を中心に、ニュースは「フクシマ」であふれている。それなのに、地元の住民は、メディアで報じられる「フクシマ発ニュース」が、自分が暮らすこの福島のことだとは受け止め切れていない。様々な疑問、放射能への不安。現実とかい離した感覚。生きるための力づけやヒントを与えたり、不安を解消する手立てとなる情報の少なさも、実感を失わせる原因の1つとも思える。

小学校通学路で行われた放射線量の計測実験=6月28日、福島市内(写真:藍原寛子、以下同)

 国際原子力事象評価尺度(INES)で、事故深刻度がチェルノブイリ原発事故と並ぶレベル7となり、国内的にも、国際的にも、世界最悪級の事故となってしまった福島第一原発事故。CNNやBBC、ニューヨークタイムスなど、海外メディアで「フクシマの現実」が報じられ、世界中の注目が集まっている。

 ローカルニュースでは、天気予報の最後に「今日の放射線量」が読み上げられ、地元紙では連日、放射線量の一覧表が掲載されている。6月下旬には、福島市内の小学校敷地や通学路等120地点以上を測定器を使って計測する大規模な放射線測定が行われたが、一般市民や避難所で生活する人々は冷静さを保って生活している。

 だが、よく話を聞くと、やはり複雑な思いが吐露される。

 「もうノイローゼになりそう」

 子どもを抱えて福島市内の温泉施設で避難生活を送る30代の母親は小さく叫んだ。吐き出せない鈍い痛みを心に抱えながら、今日も、震災前のように仕事をし、学校に行き、家事や育児をしている。放射能におびえながらも、放射能を含んだ同じ空気を吸って生きざるを得ない人間が、間違いなくこのフクシマに生きて、暮らしている。

だが、もう覚悟はできた

 今、ここフクシマで暮らす者として、この美しい自然や環境が放射能で汚染された怒りと疑問は常に離れないが、同時に、この震災は重要な問題を顕在化させ、ミッション(使命)を与えたようにも思う。「私たち、国民が知らなければならないことが知らされていない」。それがありのままの我が国の姿。私個人は、ただ国民や住民の知る権利を守り、ジャーナリズムへの誠実さを持って、取材活動を続けていくだけだ。

 本コラム「フクシマの視点」では、記者クラブに所属せずフリーランスで活動し、記者会見よりも、地元福島の現場を動き回ってできるだけ多くの人々と会い、話を聞くことを重視した取材スタンスから見えてきたフクシマの現実、フクシマの姿をレポートしていく。

 これからもフクシマでは予想もつかないことが起こるに違いない。
 だが、もう覚悟はできた。

 どんな状況になろうとも「フクシマを見捨てない」と。
 そして「『見捨てられたフクシマ』にしない」と。

 どうぞ、よろしくおねがいいたします。

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