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民主的リーダーが『チリ33人』を救った ~地底約700mで秩序を取り戻せた理由

  • 大塚 常好

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2011年7月19日(火)

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チリ33人――生存と救出、知られざる記録』ジョナサン・フランクリン著、共同通信社国際情報編集部訳、共同通信社、2520円

 地底約700メートル(m)で決死のマネジメントは成功したのか――。

 そこは、東京スカイツリー(634m)がすっぽりおさまってしまうほど深い場所。救助に行きたくても行けない暗黒の世界だ。

 昨夏に起きたチリ鉱山落盤事故。

 33人の労働者が閉じ込められたが、事故から69日後の10月13日に奇跡的に全員が無事救出された、あの事故だ。

 本書は、マスコミで唯一、救出関係者と行動をともにすることを許された米国人ジャーナリストが、100人以上の事故関係者に取材した記録である。

制御不能のパニック状態

 読み手としての興味は、33人を率いたリーダーがいかに労働者たちを統率したのかということだった。

 そこで事故当時は、「仲良く分け合っていた」と報道された食事に関する記述を本書から抽出し、組織が正常に機能していたかをチェックしてみた。

 中でも、評者が注目したのは、救出のため下へ下へと掘り進めたドリルの先端がやっと彼らの避難エリアに到達し、食料供給ができるようになるまでの17日間だ。

 気温は常に30度以上、湿度も90%以上。著者が〈けものの腹の奥深くに呑み込まれ、文明のはるか下に閉じ込められ〉ていた、と描写する極限的拘禁状態である。誰もが「ほぼ絶望」と予想したはずで、本当に「仲良く」できていたとは思えない。

 事実確認しておこう。明確なのは食料は乏しかったが、水はあったことだ。とはいえ、掘削機用に蓄えてあった5000リットルの貯水タンクの水である。何カ月も前のもので、ディーゼル燃料と砂埃の味がしたという。

 それでも、「のどの渇きは容赦なく1日7リットルも汚い水を飲んだ」と、労働者は著者に当時のことを話している。

 もっとも、そんな汚れた水を飲めず、自分の尿を飲んだり、坑内に捨ててあったコカ・コーラの空き瓶の底の「香り高い一滴」を飲み干したりといった、“異常行動”もなくはなかった。

 死活問題に直結するのは、やはり食料だろう。

 最終的には、33人に平等に食料が配給されるシステムが作られるのだが、実は、その直前はほぼパニック状態。個人個人で勝手に動き回り、派閥を作り、統制不能だったという。

 それがどんな経緯で、秩序が回復し、平和的な配給システムが構築されたというのか。苛酷なストレス下で、リーダーは何をしたというのか。その手腕に平時のビジネスパーソンが見習うべきことは少なくないはずである。

 33人を束ねたのは、2人の男だった。

 冷静沈着な現場監督のルイス・ウルスアと、道化師のように剽軽な性格のマリオ・セプルベダ。シェルターに保管された食料は、事故後すぐに厳重な監視下に置かれたが、そこに近づけるのはこの2人だけだった。

 中でも、一度は崩壊した組織を復活させた最大の立役者はマリオである。

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