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なんとカルロス・ゴーン氏がマネジメントの極意をF氏に語る

第100回:超特別版 【世界の経営者編】

2011年7月21日(木)

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口上 

 遙かWEBの彼方では御座りまするが御免を蒙りまして、口上をもって申し上げ奉りまする。まずもってオフィスのPCで仕事のフリをなさりながら当欄をご覧下さります、いずれの様に置かせられましては、益々ご健勝の体と拝察いたし、心よりお喜びを申し上げまする次第にござりまする。

 私、フェルディナント・ヤマグチで御座いまする。

 さて、2009年5月29日より始まりましたる当「走りながら考える」。
 死ねのヤメロの日経に相応しくないのと轟々たる非難にも負けず、この度目出度く連載100回目を迎えることと相成りまして御座りまする。毎度のアクセスランキングでは常に1、2を争う好順位を頂戴し、かくも賑々しくご見物を賜りますことは、私はもとより日経BP座中一党いかばかりか、ありがたき幸せと厚く厚ぅく御礼を申し上げ奉りまする次第にて御座りまする。

 この度第100回特別記念スーパーゴールデンスペシャルロイヤルプレミアム企画と題しまして、お仏蘭西はルノーの会長兼CEO、日産自動車の社長兼CEOであらせられるところの御大カルロス・ゴーン氏の独占インタビューなる大役を、私、フェルディナント・ヤマグチが相勤め申し上げまする次第に御座いまする。世に会長、社長、CEOは数多あれど、“大”の字が着く天下の“大CEO”から直接お話を賜る機会は滅多にあるものでは御座りませぬ。

 さては天下の大CEO。万一のご無礼があってはフェルディナントの紙面追放はもとより、担当I氏のクビが飛ぶ。さすれば編集長は切腹、局長は打首獄門。哀れ日経ビジネスオンラインは海の藻屑と消え一巻の終わり。万歳三唱にて喜ぶは某デーヤモンド1社のみ……ともなりかねぬ訳で御座いますれば、今回ばかりは冒頭のヨタ話を割愛してお送りいたす次第にて御座います。

 不肖私、しがないリーマン稼業の傍ら細々と筆を取る凡人では御座いますが、日頃のご愛顧ご愛読に感謝の意を込めまして、懸命に相努めますれば、何卒いずれ様には最後までごゆるりとご見物の程、隅から隅までズ、ズイーッと、お願い申し上げ奉りまする。

口上終わり

 インタビューは、好決算が伝えられ、1005人の株主が参加した日産の第112回定時株主総会の数日後に行われた。お相手は御大カルロス・ゴーン氏である。遅刻はマズイ、絶対にマズイ。私と編集I氏は、横浜はみなとみらいにある日産の本社ビル1階のカフェで、約束の時間から1時間も前に待ち合わせをした。

編集I:いや、緊張しますね。何しろ相手は天下のカルロス・ゴーンです。いいですかヤマグチさん、今日だけは本当にマジメにお願いしますよ。超多忙なゴーンさんから45分も時間を頂いているんです。

F:45分って、何かハンパな時間だね。なんで1時間じゃないんだろう。

I:あのねえヤマグチさん。どうもあんたは事の重大さが分かっていないんですか。相手はゴーンですよ。世界のゴーン。カルロス・ゴーン。日産とルノーの両方の会社のCEOを務める、正真正銘のトップエグゼクティブです。その忙しさたるやもうケタ違い。株主総会後のインタビューだって、新聞各社が15社ほど相乗りして、たったの30分しか貰えなかったんです(いわゆるラウンドテーブルというパターンです)。質問は1社1問で2分ずつみたいな。そんなゴーンさんから単独で45分も時間を頂けるなんて、特例中の特例です。これは大変なことなんですよ。もうホントにエライことです。

F:ふーん。

I:ふーんじゃないですよ。ゴーンさんへの単独インタビューなんてあんた、本来ならウチだってエース級の記者に担当させるべき最重要案件です。こんなことをヤマグチさんに言うのはアレなんですが……編集部内にも異論はあったんですよ。あいつに任せて大丈夫かって……。編集長なんて本気で心配していました。それを私が説得してここまで漕ぎ着けた。
 ともかくウチが日産から出入り禁止を食らうようなマネだけは絶対に止めて下さい。ウケ狙いでバカなことは絶対に聞かないでください。そうそう。そういや質問する内容はチャンと考えてきたでしょうね。いつもみたいに行き当たりばったりの思いつきじゃ困りますよ。そもそも宿題として渡した本は読んで来たんですか。

F:うん。『ルネッサンス 再生への挑戦』と『カルロス・ゴーン 経営を語る』ね。ちゃんと読んで来ました。質問も考えてあります。これこの通り。

I:お、珍しくメモにしてありますね。感心感心。どれ見せてご覧なさい。えーと何なに……好きな食べ物はなんですか。パジャマは何色ですか。納豆は食べられますか。たくさんもらったお給料で何を買うんですか……。な、な、何ですかこれは!

F:Iさんがどこのメディアも聞かないような斬新な質問を……って言うからさ。それでインタビューの最後にヒゲをつけてね、ゴーンさんと一緒に「ルネッサーンス!」って言って乾杯すんの。どうですか。斬新でしょう?こんなことどこのメディアも絶対に思いつきませんよ。

I:……前から薄々思っていたんだが、これでハッキリした。あんたはバカだ。正真正銘の大馬鹿野郎だ。あ、あ、約束の時間だ。どうしよう。もう間に合わない。

 受付でADフジノ氏、カメラマン陶山氏と合流する。じきに広報部課長の星野景子さんが迎えにきてくれた。首から下げるIDカードを渡され、それをかざしてセキュリティゲートを通過する。長いエスカレーターに乗り、エレベーターに乗り換え、上層階に向かう。
 厳重なセキュリティが施されたドアを抜けると、そこは役員専用フロア。照明の落とされた廊下を進む。高そうな絵が壁に掛かっている。星野さんが重厚な扉を押し開ける。横浜港を一望できる立派な応接室だ。何人かの美人広報嬢が入れ替わり立ち代わり入ってきて名刺交換をした。今度デートしましょう。

 陶山さんが手際よくカメラをセットし、ADフジノ氏は星野さんと何やら相談をしている。編集I氏は先程のショックから立ち直れず、放心状態でポカンと口を開けたままソファに腰掛けている。大丈夫。任せといて。さっきのメモは冗談ですってば。

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「なんとカルロス・ゴーン氏がマネジメントの極意をF氏に語る」の著者

フェル

フェル(ふぇるでぃなんと・やまぐち)

コラムニスト

堅気のリーマン稼業の傍ら、細々と物書きの真似事をしております。最近は講演やらテレビ・ラジオへの出演も増えてきました。いったい本業は何なのか自分でもよく分からなくなっています。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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