「フクシマの視点」

ルワンダ生まれ、福島と生きる

内戦と原発事故、“難民”だから分かり合える

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2011年8月17日(水)

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 ディアスポラ(diaspora)――。戻れる地域がなくなり、安全な土地を求めて転々とする「離散定住集団」のことである。

 原発事故が収束するメドが立たず、放射能の影響も分からない中で、住民が安全や安心を求めて転々と移る「ディアスポラ的状態」になる可能性を懸念する声が、被災地域の人々や行政担当者から聞こえてくる。その上、原発周辺の市町村役場自体も、本来の地域から離れて臨時支所を開設、このまま住民が分散し続ければ、自治体が解散したり合併する可能性もある。

 県によると、4万6000人を超す人々が福島県を離れて暮らしているという。ただし、行政に届け出ていない人の自主避難者や一時疎開・避難者もカウントされれば、実態として行き場を模索している“潜在的難民”や“ディアスポラ”の数は相当膨れ上がるはずだ。

 国は、各地での除染活動で放射線量が低減されれば、原発から20km圏外の緊急時避難準備区域を解除して、住民が戻れるようにするとの方針を示している。しかし、目に見えない、しかも何十年後かに出る可能性がある放射性物質の影響は読み切れず、既に避難先で新しい生活を始めた住民もいる。国や自治体でゴーサインが出されてもすぐに住民が戻るのかは不透明だ。

福島市に住んで約17年

 長期化する避難生活の中で、いまだ7万人以上の県内避難者は、何を将来のよりどころにしていったらいいのか。先が見えない絶望感や虚無感をどうしたらいいのか。そう考えた時、1人の女性のことが頭に浮かんだ。民族紛争による内戦が繰り返されたルワンダで、虐殺(ジェノサイド)を逃れて難民となったカンベンガ・マリールイズさん。その後福島市民らの支援で来日し、福島市に住んで約17年になる。

虐殺を逃れ、福島で暮らして約17年のカンベンガ・マリールイズさん

 「ルワンダは内戦、フクシマは震災と原発事故と、原因は違っても、突然に起きた出来事で家や家族などすべてをなくし、自分が住み慣れたところを離れて生活するのは同じ。それまでの生活が一気に終わった。だからよく分かる」。

 震災直後、ルワンダ大使館からマリールイズさんに「福島を出るように」との連絡があった。高校生の末娘は九州に避難させたが、自身は福島にとどまり、近所の人と助け合って過ごした。

 その間、スカイプやメール、電話などで、英国の公共放送局BBCやルワンダのラジオ局などメディアの取材を受け、ルワンダ語から英語、フランス語、スワヒリ語で、福島の様子を次々と海外にレポートし続けた。「『福島で水が出るようになった』とか、『店も開き始めた』とか、『放射能の関係で、マスクをして外に出るようにして、無駄な外出はしないようにと日本の政府から指示が出ている』ことなどを伝えた」という。

がれきじゃなくて、私と共に過ごした家の壁

 マリールイズさんは青年海外協力隊の現地協力員として日本を訪れ、福島文化学園で洋裁の研修を受けた後、1994年2月にルワンダに帰国。ところがその後、内戦が激化し、家族ともども難民となった。隣国コンゴの難民キャンプで過ごす中、海外の医療活動など人道支援をしているAMDA(アムダ、本部・岡山県)の日本人医師と遭遇した。

 通訳をしながら、危機的状況を福島の友人に訴えたところ、友人たちが支援活動を展開してくれた。そして、市内の桜の聖母短大への聴講生としての受け入れがかない、無事来日を果たした。

 当時私は、地元の新聞社に勤めており、マリールイズさんを救い出そうという活動の様子を同僚の記者と取材した。福島の人たちが結束して熱心に支援したのを今でも覚えている。

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著者プロフィール

藍原 寛子(あいはら・ひろこ)

藍原 寛子フリーランスの医療ジャーナリスト。福島県福島市生まれ。福島民友新聞社で取材記者兼デスクをした後、国会議員公設秘書を経て、現在、取材活動をしている。米国マイアミ大学メディカルスクール客員研究員として米国の移植医療を学んだ後、フィリピン大学哲学科客員研究員、アテネオ・デ・マニラ大学フィリピン文化研究所客員研究員として、フィリピンの臓器売買のブローケージシステムを調査した。現在は福島を拠点に、東日本大震災を取材、報道している。フルブライター、東京大学医療政策人材養成講座4期生、日本医学ジャーナリスト協会員。



このコラムについて

フクシマの視点

東日本大震災は、多数の人命を奪い、社会資本、自然環境を破壊したが、同時に市民社会、環境、教育、経済、政治や行政など、各分野に巨大なパラダイム・シフトを起こしている。我が国はどのような社会を志向していこうとしているのか。また志向していくべきなのか。「原発震災」で、社会の姿が大きく変わりつつある福島、震災のフロントラインで生きる人々の姿から、私たちの社会のありようをグローカル(グローバル+ローカル)な視点で考える。

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