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彼らが「抗議」を受け入れた理由

2011年8月19日(金)

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 ロンドンで起こった一連の暴動について、ニュース・メディアの扱いは思いのほか小さかった。
 ケーブルテレビ経由で配信されてくるCNNやBBCのニュース番組が、ほぼ一日中映像を流していたのに対して、日本のテレビの報道は、新聞で言うところの「ベタ記事」扱いだった。

 最近読んだ本の中に、米国における国際ニュースの現状を扱った記述があった。
 なんでも苦しい台所事情が続く米国のメディア企業では、リストラの第一候補に挙げられているのが、高コストの割に不人気な海外ニュース部門であるらしく、リーマンショック以来のこの数年の間に、全新聞の3分の2が、海外支局を閉鎖ないしは縮小する事態に追い込まれているのだという。おかげで、米国における国際ニュースの配信量は、9.11以降、国民の間に広まりつつある内向き志向の意識も手伝って、一貫して減少し続けているのだそうだ。

 もしかすると、日本のメディア企業の国際ニュース部門も同じ状況に陥っているのではなかろうか。
 調べたわけではないが、実感ベースでは、たしかに海外発のニュースが減っている感じはする。

 で、その代わりに、猟奇的な殺人事件や、幼児虐待の報道量が増えている気がする。
 幼児虐待そのものが増えているのか、報道量が増えているだけなのか、細かいところは調べてみないとわからないが、個人的には、その種のニュースが大きく扱われている影で、今回のロンドン暴動のようなニュースが片隅に追いやられている状況には、懸念を感じる。せっかく地デジ化できれいになったテレビの画面が、昭和のワイドショーみたいな扇情的なニュースで埋まるのはつらい。勘弁してほしい。

 もしかして、テレビ各社は、波及効果を恐れているのだろうか。
 前回触れたフジテレビの「韓流推し」に対する抗議行動が、ネット社会の一部で変な具合いに盛り上がった経緯もあることだし、それを思えば、現場が「暴動」や「デモ」や「集団行動」の報道に対して慎重になった可能性は捨て切れない。

 もっとうがった見方をするなら、ロンドンの暴動については、あえて視聴者を刺激するテの報道を控えるように、然るべきスジから通達があったという線も考えられる。どっちみち真相はわからないが。

 ロンドン暴動の背景については、分析する人によって見方がバラバラ過ぎて、正直なところ、私のような部外者には皆目見当がつかない。
 ただ、本質的な原因についてはともかく、略奪の勃発や他地域への波及の過程でスマートフォンが大きな役割を果たした点に関しては、専門家の見方はおおむね一致している。

 「単なる愉快犯」だと断定する人々もいる。
 つまり、ロンドンの各所で放火や略奪を展開していた連中は、暴動を起こすこと以外にさしたる主張も目的も持っていなかったというのだ。その意味で、今回の暴動は、集団行動を通じて何らかの変革を志向していた従来のモデルの政治的、宗教的、階級的ないしは人種的な暴動とはまったく種類が違う。言ってみれば、町の角々にいる不良少年たちが、たまたまスマートフォンという「集団化装置」を持っていたことで、些細な暴力が拡大しただけなのかもしれないわけだ。

 なるほど。
 この見方を全面的に支持するわけではないが、今回のロンドンの例に限らず、中東でも、アフガニスタンでも、その他の地域でも、21世紀の暴動の鍵を握っているのがガジェット(携帯型の情報ツール)である点は、ほぼ間違いはないと思う。

コメント37

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「彼らが「抗議」を受け入れた理由」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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