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彼女がスカーフを許されない理由

日本の企業文化の中で生きる日本人ムスリム2

  • 佐藤 兼永

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2011年9月13日(火)

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 前回は日本人男性ムスリムの話を紹介した。そこで今回は、日本人の女性信者に登場してもらおう。

 東京の北多摩に住むイーマーンさんは、ヒジャーブと呼ばれるスカーフをまとい、毎朝、港区の会社に通勤している。彼女がイスラム教に最初に出会ったのは、10年以上前のこと。コーランの暗誦コンテストを見たマレーシア旅行まで遡る。その時アラビア語に興味を持ち、勉強したいと思った。しかし仕事が忙しく、実際にクラスを取り始めたのは今から6年ほど前だ。先生たちが皆ムスリムだったことや、自分でコーランの日本語訳を読んだことから徐々にイスラム教との距離が縮まり、4年ほど前に入信した。以来、普段からイスラム教の教えを極力守る努力をしているという。「礼拝をするとか食べてはいけないものを食べないとか、守れる限り守るようにしてます」。

 しかし、たとえイスラム教の知識を持つ人が会社を訪ねて来たとしても、彼女を見てムスリムだと気づくことは恐らくないだろう。勤務中にスカーフを被ることを社長が認めていないため、毎朝会社に着くとスカーフを外してしまう。来客者に自己紹介する時も、「イーマーン」というムスリム名ではなく、両親につけてもらった名前を名乗る。日本人ムスリムが入信する際には、ほとんどの場合ムスリムとしての名前をつける。中にはムスリム名へ正式に改名する人もいるが、イーマーンさんは戸籍名をムスリム名に変えていない。

 同僚の中には、「仕事中もスカーフをつけていてかまわないのでは」と言ってくれる人もいる。しかし社長には勤務中は外すように言われている。

 「『いいんじゃないの』って言う方もいるんですよ。でも上の方に『嫌ですよね?』って尋ねると、『うん』って言われちゃうので。だから何ともこれは仕方がない。生きることの方が取りあえず先なので」(イーマーンさん)

社長がスカーフ姿を認めない理由

 社長がスカーフ着用を認めないのは、何も知らずに来社する取引先の人に誤解されたくないからなのではないか? そのようにイーマーンさんは考えている。社長に理由を聞いたことはない。ただ、様々な言動から推し量ると、イスラム教に対する嫌悪感が理由ではないようだ。

 「ちっちゃい会社ですからね。それだけみんなの生活がかかっているわけじゃないですか」。イーマーンさんは、そのように社長の気持ちを代弁する。彼女の勤務先は従業員10人ほどの貿易会社で、中国との取引がほとんどだという。たまにインドネシアの会社と取引をする以外、イスラム圏との関係はほとんどない。そしてオフィスへ訪ねて来る日本の取引先は、地方の小さな会社を経営する年配の人が多い。

 「取引先の方に理解があればよいのですが。そうでなかった時に『変な会社とはつき合わない』と言われたりすると困ると思うんです」

 ただ、取引先の反応を心配する気持ちの根っこには、社長自身のイスラム教に対する偏見があるのかもしれない。イーマーンさんによると、出勤時に社長と会社の近くでばったり会うと、スカーフ姿を怪しいと言われることがあるという。

 「朝、ごく普通の格好でヒジャーブをして歩いていると、たまに『テロリストみたいだよな』って言われることがありますから。まあ半分冗談なんでしょうけどね。でも、もしかしたら、ムスリムは“怪しい”っていうイメージが刷り込まれているのかもしれません」

 それでもイーマーンさんが社長の態度に理解を示すのは、向こうも歩み寄ってくれていると考えるからだ。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長