「千堀の「投句教室575・別館」 飛び込め! かわずくん」

Vol.30 「後朝」って、なんと読むのかわかります?

読み手の心を惹きつけて立ち止まらせるもの

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2011年9月2日(金)

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 二百十日とは9月1日からの数日間を指し、まさに今のこと。台風が多い時季だそうですが、律儀にも台風12号が日本列島界隈にいます。風雨はほどほどでお願いしたい9月の始まり、今週のかわずくんは、堀やん先生ですよ!「予選突破まであと一歩な句」を、堀やん先生がノリ突っ込みを交えつつ語ってくださいます。

連載管理人A(以下A) この時季は夏の疲れが出てくるせいか、こんな句が来ていましたよ。

社員証うどんに浸かる晩夏かな

とち路

堀本裕樹(以下堀) この句、予選の段階ではけっこう惹かれました。

 昔、ある会社に勤めていたころ、やはり同じように社員証を兼ねたICカードを首からぶらさげていました。その経験からいうと、確かにご飯食べるときとか、邪魔でしたね。シャツの胸ポケットに入れたり、後ろに回したりして。

A:堀やん先生、会社員だったんだ…。ICカードって外に出たら外せばいいのに、面倒だからそのままなんですよね。

:うどんに浸けたことはなかったなあ(笑)。掲句の面白さは、そこなんでしょうけどね。

A:顔写真入りかもしれない社員証ICカードをうっかりうどんの汁に浸けてしまうなんて、どんだけ疲れているのかと。なかなかいい句ではありませんか?

:取らなかった理由は、ぼくは食べ物の句は、読んでおいしそうなものがいいと思っているんです。その句を読んで、ああ食べてみたいなあと食欲をそそられるような。

たとえば、

美しき緑走れり夏料理

星野立子

山国や新蕎麦を切る音迅し

井上雪

火にかけて水鳴る鍋や新豆腐

原月舟

 一句目の季語は、「夏料理」。二句目は「新蕎麦」、三句目は「新豆腐」がそれぞれ秋の季語ですね。どれも美味しそうでしょ? あと、一句に抒情が溢れていますよね。

A:なるほど。どの句も「いただきます」という気になりますね。

:ですから、そういう見方からいうと、掲句の「うどん」は季語ではないですが、食指が動かなかったのかもしれません。季語が「晩夏」である必然性も、少しどうなのかなと思いました。

A:いやいや、節電で暑いオフィス、家族サービス、寝ぐるしい夜、夏はビジネスマンを疲弊させるんですよ。そこで消化のいいうどんでも食べようと思ったら……晩夏の悲劇ですね。

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著者プロフィール

千野 帽子(ちの ぼうし)

パリ第4大学博士課程修了。京都在住の勤め人・俳人。2004年より休日のみ文筆業。著書に、「東京新聞」連載をまとめた『文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。』『世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来篇』(河出書房新社)、「野性時代」連載をまとめた『読まず嫌い。』(角川書店)、読書漫筆集『文學少女の友』(青土社)。「ミステリマガジン」「ジャーロ」にて連載、また「東京新聞」「讀賣新聞」「SPUR」「Figaro japon」「BRUTUS」「HanakoWEST」「yomyom」「週刊文春」「文藝」「文學界」「すばる」「ユリイカ」「真夜中」「小説トリッパー」「早稲田文学」「ダ・ヴィンチ」「週刊読書人」「別冊宝島」などに寄稿。

堀本 裕樹(ほりもと・ゆうき)

俳人。1974年、和歌山県生まれ。國學院大学卒。俳句結社「河」元編集長。河賞、角川春樹賞、北斗賞など受賞。俳人協会会員。実践女子学園生涯学習センター講師。現在、上野一孝代表の俳誌「梓」同人。月1回、定例句会「いるか句会」開催。詳しくは(公式ブログ)で。ツィッターはこちら



このコラムについて

千堀の「投句教室575・別館」 飛び込め! かわずくん

★自分の枠を越えて生まれるアイデア、唸る言い回し、盛り上がるブレスト、「発想」「表現」「伝達」を、5+7+5=17音で鍛える、それがビジネスパーソンにとっての俳句。★ただし、欠かせないことがある。自分とは違う経験、常識、センスを持つ「他人」だ。★限界以上に削り込まれた字数で「全てを伝えきれない」ことを前提に行われるコミュニケーションの面白さは、他人が自分の句を「自分が考えていた意味とは全く違う受け止め方」をしてくれることにある。★自分の中にあったけれど気がつかなかった意味を、他人が見つけてくれるのだ。★ということで、俳句は一人でやるよりみんなでやるのが一番楽しい。★俳句会の王道を進む若き俳人、堀本裕樹師、師匠を持たずストリートで我が道を歩む千野帽子師、両極端のお二人と一緒に、他人の17音に驚き、自分の17音で感動させましょう。コメント欄で待ってます!

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