二百十日とは9月1日からの数日間を指し、まさに今のこと。台風が多い時季だそうですが、律儀にも台風12号が日本列島界隈にいます。風雨はほどほどでお願いしたい9月の始まり、今週のかわずくんは、堀やん先生ですよ!「予選突破まであと一歩な句」を、堀やん先生がノリ突っ込みを交えつつ語ってくださいます。

連載管理人A(以下A) この時季は夏の疲れが出てくるせいか、こんな句が来ていましたよ。
社員証うどんに浸かる晩夏かな
とち路
堀本裕樹(以下堀) この句、予選の段階ではけっこう惹かれました。
昔、ある会社に勤めていたころ、やはり同じように社員証を兼ねたICカードを首からぶらさげていました。その経験からいうと、確かにご飯食べるときとか、邪魔でしたね。シャツの胸ポケットに入れたり、後ろに回したりして。
A:堀やん先生、会社員だったんだ…。ICカードって外に出たら外せばいいのに、面倒だからそのままなんですよね。
堀:うどんに浸けたことはなかったなあ(笑)。掲句の面白さは、そこなんでしょうけどね。
A:顔写真入りかもしれない社員証ICカードをうっかりうどんの汁に浸けてしまうなんて、どんだけ疲れているのかと。なかなかいい句ではありませんか?
堀:取らなかった理由は、ぼくは食べ物の句は、読んでおいしそうなものがいいと思っているんです。その句を読んで、ああ食べてみたいなあと食欲をそそられるような。
たとえば、
美しき緑走れり夏料理
星野立子
山国や新蕎麦を切る音迅し
井上雪
火にかけて水鳴る鍋や新豆腐
原月舟
一句目の季語は、「夏料理」。二句目は「新蕎麦」、三句目は「新豆腐」がそれぞれ秋の季語ですね。どれも美味しそうでしょ? あと、一句に抒情が溢れていますよね。
A:なるほど。どの句も「いただきます」という気になりますね。
堀:ですから、そういう見方からいうと、掲句の「うどん」は季語ではないですが、食指が動かなかったのかもしれません。季語が「晩夏」である必然性も、少しどうなのかなと思いました。
A:いやいや、節電で暑いオフィス、家族サービス、寝ぐるしい夜、夏はビジネスマンを疲弊させるんですよ。そこで消化のいいうどんでも食べようと思ったら……晩夏の悲劇ですね。
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