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ドイツ人の熱狂は人間が善に向かって進歩する兆候

共感する【9】――カントの共感理論とフランス革命

2011年9月8日(木)

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歴史の進歩

 カントが同情などの共感の概念を道徳的な原則とすることには、否定的な結論をくだしていたのは、若い頃も老年になってからも変わりはない。同情する人は、善き人であろうが、その善さを道徳的な原則としてはならないのである。

 しかし晩年のカントは『諸学部の争い』において、この共感の概念を『判断力批判』のコモンセンスとしての共感の概念を延長する形で、人間の道徳的な素質をうかがわせる一つの兆しとみなすという興味深い試みをしている。

 カントはこの書物で、人間の歴史は進歩するものかどうかという問いを立てる。「世界市民という視点からみた普遍史の理念」という歴史哲学の論文では、人間が共和的な体制を確立し、対外的にも世界市民的な関係を作りだすのは「自然の計画」[1]であると考えていた。これは歴史は進歩するということである。しかしこれを自然の計画として定めるということは、歴史の進歩が神の摂理であると語ることであるから、一人の哲学者の断定にすぎない。

歴史の徴

 カントは神の摂理ではなく、具体的な歴史の出来事のうちで、このような歴史の進歩を確実に示すものがあるのではないかと考えた。それは「人類にはある性質および能力があり、つまり人類がより善い方向に前進することの原因であり、さらに(この前進は自由を与えられた存在者の行いであるべきだから)、この前進の創始者であるという性質および能力が備わっていることを指し示すような経験」[2]がみつかれば、それは歴史が進歩することを予言するものではないかと考えたのである。

 これは「原因」であり「創始者」であるとは言っても、歴史の進歩そのものの原因であるわけではない。たんに「示唆的なもの、歴史の徴」[3]にすぎないものである。歴史を進歩させるのは、もっと別のものであるが、その進歩の確実さを示す兆候になるものがあるのではないかと考えたのである。

フランス革命の熱狂

 そしてカントはみずからの同時代において、人類の歴史が善に向かって進歩することを告げる確実な兆しを発見した。それはフランス革命にたいするドイツ国民の熱狂ぶりである。「われわれが今日そのなりゆきを見守ってきた、才気あふれる国民による革命は、成功するかもしれないし、失敗するかもしれない」[4]。それでもこの革命は、「自分たちは共演者としてこの劇に巻き込まれていない」[5]ドイツ人たちの「心のなかに、熱狂と紙一重の、願望としての参加を、つまり共感を」[6]生み出したことに注目する。

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「ドイツ人の熱狂は人間が善に向かって進歩する兆候」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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