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日本式の葬式で手を合わせてもよい?

日本社会に生きるムスリム1

  • 佐藤 兼永

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2011年9月20日(火)

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 日本人ムスリムと話をしていると、次のようなことを耳にすることが多い――家族や親戚など自分に近い関係にある人ほど、自分がイスラム教に入信したことを受け入れにくい。彼らはその背景を次のように考える。日本人は宗教に対して無関心なため、ムスリムにとって日本は実は暮らしやすい。しかし他人の宗教に対して寛容な人も、自分の身内で信仰に目覚める人が出てくると、それを受け入れることが難しい場合がある。

 前回紹介した日本人ムスリムのイーマーンさんは、彼女がイスラム教に入信したことをまだ知らない親戚に会うことになった時、彼女のスカーフ姿に彼らがどんな反応を示すか楽しみだと言った。しかしそのような機会を楽しみに思える日本人ムスリムばかりではない。

 多くの日本人ムスリムにとって、冠婚葬祭は大きな悩みの種だ。自分に近しい人の結婚式や葬儀であればあるほど、出席することが当然視されるし、自分でも出席したいと考える。

 しかしムスリムにとって冠婚葬祭はやっかいだ。単に、周囲の理解が得られるかどうかの問題があるからだけではない。日本で一般的な結婚式や葬儀、法要などの冠婚葬祭のほとんどは、イスラム教以外の形式で執り行われる。日本式冠婚葬祭に出席することへのためらいと葛藤の声をしばしば耳にする。

 さらに外国人ムスリムの場合、イスラム教以外の形式で行われる行事への参加に対して、より強い抵抗感を持つ傾向がある。このため外国人ムスリムと日本人が国際結婚した家庭では、冠婚葬祭への対応が大きな悩みになることが多い。

形だけは日本のやり方に合わせる

 イーマーンさんは入信以降、知り合いの葬儀に参加したことがあるという。

 「私は知人の葬式に一応行ってます。亡くなった方や遺族の方と親交があれば、やっぱりその方(の葬儀)に出席する方がよいですから。亡くなった方が神道の方なら神道のやり方に従います。ただご冥福は祈りません。祈れませんので」(イーマーンさん)

 彼女は焼香の際、手を合わせている。しかし「手は一応合わせていますけど、別に何も考えていない」という。

 ここで2点、補足をしておきたい。

 まず、イーマーンさんが「一応」という言葉を使うのは、仕事上のつき合いのためにおざなりで参列したからではない。合掌や焼香など、形だけは日本のやり方に従ったということだ。

 もう一つは、「冥福は祈れない」という、イーマーンさんの心の中のことだ。イスラム教は一神教なので、故人やイスラム教以外の神様に対して祈ることはできない。焼香などで故人の遺体と相対した時も、祈りを捧げる対象になるのは、イスラム教の神であるアッラーだけだ。この記事に登場するムスリムをはじめ、イスラム式以外の葬儀に参列しても宗教上問題ないと考えるムスリムは、「冥福は祈れない」ことを例外なく強調する。

 さて、ムスリムが日本式の冠婚葬祭に出席しないことについて抱いている危惧を、イーマーンさんは次のように語った。

 「葬式にも出ない。結婚式にも出ない。何もしない。そのようにすべてを拒んでしまったら、ごく普通の日本人との接点がどんどんなくなるじゃないですか。そうすると『なんか変だよね、あの人たち』みたいに思われる」

 「『クリスチャンだって仏教の葬式に出てくるじゃん。なのに、なんでムスリムは頑なに出席を拒むの?』となると、自分たちが孤立してしまう。日本人であれば普通の、最低限のつき合いをしていく中で、ムスリムの良さを感じてもらえれば、その方がイスラム教に対する理解を得られるんじゃないかなって思う」

手を合わせることへのためらい

 もちろんイーマーンさんのように、イスラム式でない葬儀などにためらいなく出席できる人ばかりではない。

 都内のモスクで出会った、ある日本人の男性ムスリムに冠婚葬祭の話を聞いた。彼は、自身が以前参列した葬儀での話をしてくれた。そして、その時に行った“手の合わせ方”を、筆者の目の前で再現してくれた。仏前で手を合わせる時のように、両手を胸の前に持っていく。両手の手のひらを向かい合わせるのだが、両手の間には5センチほどの隙間があった。男性は、ドゥアーと呼ばれるイスラム教のお祈りのポーズを取っていたという。

 イスラム教には地面にひれ伏す形の礼拝とは別に、ドゥアーと呼ばれるお祈りがある。アッラーに捧げる個人的な祈りで、両手を胸の前に持って行くが、手のひらを合わせずに上に向けるのが一般的だ。遠目からは男性が仏前で手を合わせているように見えたかもしれない。しかし男性としては、このドゥアーをしていたという。

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