「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

大臣の失言と裏を読みたがる人々

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2011年9月16日(金)

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 今回は、つい先ごろ辞任した鉢呂前経産相の発言について考えてみたい。
 その話題はもううんざりだと思っている方もおられるだろう。もっともだ。私自身、報道が始まった当初は熱心に追いかけていたが、二日後には飽きた。現在は、うんざりしている。

 とはいえ、鉢呂前大臣の発言と、その言葉をめぐる報道の背景については、記憶が薄れないうちに記録しておくべきだ。それに、私自身がうんざりしている現今の状況についても、これ以上うんざりして、一言も語りたくなくなる前に、きちんと文章にしておいた方が良いと考えている。だから書く。とてもうんざりしているけれども。

 伝えられているところによれば、鉢呂経産相(当時)は、9日の閣議後の記者会見で、前日に視察した福島県の東京電力福島第1原発などについて感想を述べる中で、「残念ながら周辺市町村の市街地は人っ子ひとりいない『死の町』だった」と語ったことになっている。

 この発言について、同日の共同電は《「死の町」との表現に配慮を欠くとの批判も出そうだ。》と伝えている。
 さらにこの発言に先立って、「放射能をうつす」という趣旨の発言があったとされる。

 放射能発言について最初に報じたのはフジテレビ(FNN)のニュース(9日夕方のテレビニュース)で、この時、FNNでは大臣の様子を《福島県内の視察を終えた8日夜、着ていた防災服の袖を取材記者になすり付けて、「放射能を分けてやるよ」などと話した》というふうに報じている。

 で、このニュースを機に、新聞各紙も10日付の朝刊(ウェブ配信では、9日深夜から10日早朝にかけて)で鉢呂前経産相の一連の発言を大きく取り上げたわけだ。

 鉢呂前大臣本人の時系列での動向は、以下の通り。

・8日深夜の記者との懇談:「放射能をうつす」趣旨の発言。および記者に近づく(あるいは防災服をなすりつける)行為。
・9日午前の記者会見:「死の町」発言。
・9日午後:野田佳彦首相が、「死の町」発言について、「不穏当な発言だ。謝罪して訂正してほしい」と不快感を表明。これを受けて、鉢呂氏は「思いはみなさんにご理解いただけると思うが、被災地のみなさんに誤解を与える表現だった。真摯(しんし)に反省し、表現を撤回したい。大変申し訳ありませんでした」と陳謝した。
・10日夜:鉢呂氏は、野田佳彦首相と会談。辞任を申し出て了承された。

 新聞各紙の報道の順序や、ニュアンスの違いなど、細かく検証すれば突っ込みどころはまだまだある。が、現場にいたわけでもない私が、今になって報道をほじくり返したところで、たいして意味のある仕事はできない。それに、その種の検証記事はウェブ上のメディアで、既にいくつか発表されている。興味のある向きは、そちらを参照してほしい。

 現在の段階で私が疑問に感じている点はおおまかに言って次の2点だ。
 一つは、「死の町」発言が、職を辞するに値する問題発言だったのかどうかについて。
 もう一つは、「放射能発言」の真相が結局はっきりしていない点だ。

 まず一つ目について。「死の町」という表現だけを取り上げると、たしかに無神経な感じはする。心ならずも離れて暮らしている自分のふるさとを「死」という言葉で表現された被災者の気持を忖度すれば、彼らが反発を感じるのは当然だ。

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著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

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