• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

足湯が溶かした2500人の張り裂ける思い

巨大避難所で暮らした名もなき人々のつぶやきと表情を出版

  • 藍原 寛子

バックナンバー

2011年10月5日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 避難所で暮らす80代の女性がつぶやいた。

 3か月で自宅に2、3回しか帰れず、
 自宅が恋しい。
 仮設住宅も抽選でまだ入れない。
 人生すべて一からで、これからが一番大切だから。

 60代の男性は「あの日」を振り返る。

 震災の日、
 護岸で仕事をしていたら、
 大きな波が来たのがわかった。
 あと30分いたら巻き込まれていたかとも思う。
 仮設はまだ決まってないけど、
 ここにいさせてもらえているだけでありがたいから、
 居られるだけいたい。
 生きているだけで十分だと思う。

(ここまで『生きている 生きていく ビッグパレットふくしま避難所記』より、許可を得て転載。以下同)

 東京電力福島第一原発事故後の3月16日、富岡町や川内村など浜通りの住民が緊急避難し、最多で2500人もの人々が生活を送った中通り・郡山市のコンベンション施設「ビッグパレットふくしま」。開設直後は通路が人であふれる状態だったが、仮設住宅への入居が進むにつれて人数も減り、開設から約5カ月半の8月31日に閉鎖された。

ビッグパレットふくしまの避難所閉所式=8月31日、郡山市(写真:藍原寛子、以下同)

 この施設で避難生活を送った人々のつぶやきと、表情をとらえた写真による記録集『生きている 生きていく ビッグパレットふくしま避難所記』(アム・プロモーション)が10月3日発売された。

 物流、直接製造コストを除いた販売収益は、富岡町と川内村の災害対策本部に寄付される。

 赤地にタイトルをシンプルに書いた表紙。この記録集は、ある“特命”を受けた1人の福島県職員の思いから誕生した。

1人の県職員に突然の“特命”下る

 その人は、福島県スポーツ局生涯学習課の社会教育主事、天野和彦さん。震災後、同僚と2人1組で相馬市の避難所を回っていた天野さんは、もうじき震災から1カ月を迎えようとしていた4月9日、突然、県の災害対策本部に呼ばれ、内示を受ける。

 「ビッグパレットふくしまの避難所に常勤してほしい」

 「はい、分かりました」と天野さんが答えると、「本当に良いの。じゃ、1日ゆっくり休んでもらって。(4月)11日に着任してください」

 何か変だなと思いつつ、11日に着任した。

 実はこの時、ビッグパレットふくしまは危機的状況に陥っていた。「福島こどもの未来映画祭」や、生涯学習や男女共同参画関連のイベントなど、県職員の中でも様々な事業に携わり、県内外の人と豊富なネットワークを持つ“異色の県職員”天野さんに、現状打開の白羽の矢が立てられたのだった。

 「まさに、我が目を疑う状態でした」。避難所に着任して驚いた。生活環境は劣悪だった。

 コンベンションホールの広いフロアは天井板が落ちて危険な状態で、4階も壊滅的被害を受けていた。そのために避難者は、施設の通路や階段ホールなど限られた場所にスペースを確保し、固いコンクリートの上に毛布を2,3枚重ねて敷いて身を横たえていた。

 エレベーターは使えないため、高齢者や体の不自由な人が上の階にいたり、トイレの前も居住スペースになっていたりと、避難者の状況や衛生面への配慮もされていない。既に体調を崩す人も出始めており、4月10日にはノロウイルスの疑いの患者が発生。感染性胃腸炎も起きており、これ以上の集団感染は防がねばならなかった。

 「このままでは誰かが死ぬ。誰も死なせてはならない」

コメント12

「フクシマの視点」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

全体の2~3割の人でも理解し、動き出してくれれば、会社は急速に変わります。

中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長