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マルクスにとっての抵抗のシンボル

抵抗する[1]――正義について考える【25】

2011年10月6日(木)

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(「正義について考える」【24】はこちら

抵抗とは

 これからしばらく、抵抗するという人間の行為について考えたい。人間はどのようなときに抵抗するのだろうか。それは相手が求めること、相手が命じることのうちに、道理に反したことがある、それは非道であると考えるからだろう。ということは、相手の要求や命令にしたがわない自分のほうに、「理がある」と考えているということだ。抵抗する者は、相手の要求が不正なものであり、それにしたがわないことで正義が実現されると、暗黙のうちにでも考えているはずだ。

 西洋の歴史のうちで最初に抵抗者としての姿を表したのは、プロメテウスである。なかば神であるプロメテウスは、神々の王であるゼウスに抵抗した。これは人間が神に抵抗する最初の事例とみなすことができるだろう。その抵抗の論理はどのようなものだっただろうか。それにはヘシオドス版の物語とアイスキュロス版の物語がある。

ヘシオドスの語るプロメテウスの抵抗

 ヘシオドスによると、プロメテウスは人間の利益を計るためにゼウスを騙したのである。プロメテウスは、大きな牡牛を解体して、人間の取り分(モイラ)として、肉と臓物を取り分け、それを見栄えの悪い胃袋に包んで置いた。またゼウスの取り分として「白い骨を業巧みに按配して艶艶しい脂肪でそれを包んで置いた」[1]。ゼウスがその分け方を不公平だと指摘すると、それではゼウスにどちらを選ぶか、決めていただきたいと申し出る。

 ゼウスはプロメテウスの意図を見破る。「ゼウスは事の次第を看て取り、その企みに気付きそこなうことはなかった。そこで彼は心に死すべき身の人間どもにとっての災いを図ったが、これが後に実現されることになる」[2]。そして騙されていることが分かっているのに、ゼウスは脂肪で覆われた骨を選ぶ。そして脂肪を取り除いてみて、「心に怒り、憤怒は彼の心に入り込んだ」[3]のだった。

 その復讐としてゼウスは人間から食べ物を隠してしまう。こうして人間は額に汗して働いて、食べ物を手にいれなければならなくなる。さらにゼウスは調理するための火も隠してしまう。人間を哀れに思ったプロメテウスは、天上からウイキョウの茎に火を隠して人間に与える。ゼウスはさらに怒って、女神の外見をもち、心の中は泥棒のようなパンドラをプロメテウスの弟のエピメテウスに与えた。その後、パンドラの箱を開いた人間たちにどのような災難が訪れたのかは、周知のことだろう。

 ゼウスがあえて騙されたのは不思議にも思えるが、ギリシアの人々は祭壇で牛の骨と脂肪を神々に捧げるという儀礼をずっと続けたのであり、これはゼウスの本来の意図だったと考えられる。骨は不滅であるが、肉と臓物は牛が死ぬと最初に腐り始める部位だからだ。ヘシオドスはこの詩の最初のところで、女神たちからこう呼び掛けられたと語っている。「野山に暮らす羊飼いたちよ、恥ずべき哀れなものたちよ、食いの腹しかもたぬものらよ」[4]と。

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「マルクスにとっての抵抗のシンボル」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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