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毀誉褒貶の中を生きたジョブズ

2011年10月7日(金)

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 スティーブ・ジョブズ氏が亡くなった。
 先月だったか、彼が米アップルの経営から退く意思を表明した際に流れてきた画像を見て、ある程度の心構えはできていた。「ああ、この痩せ方はただごとではないぞ」
 と、その時に、遠くない時期に訃報が届くであろうことを、私は半ば予期した。

 が、実際に訃報に接してみると、感慨はまた別だ。直接に面識の無い、いわゆる有名人の死にこれほど深い喪失感を感じるのは、もしかしたらジョン・レノンが死んだ時以来かもしれない。

 ジョブズは、私とほぼ同世代(満年齢で1年3カ月、日本流の学年で言うと2学年ジョブズが上ということになる)なのだが、個人的にはあんまりそういうふうに感じたことは無い。ずっと見上げてきた存在だったからかもしれない。

 彼の名前をはじめて聞いたのは、1980年代のはじめ頃だ。

 当時出入りしていたコンピュータゲーム雑誌(「遊撃手」)の編集部には、「AppleII」が何台か置いてあり、専用のゲームソフトが300種類ほど揃っていた。ゲーム以外にも、初歩的なアニメーションソフトや、脳波を画像出力するツールなど、先進的でワクワクさせるアイテムが次から次へと出てきていた時期だ。
 その、編集部にソフトウェアを持ち込んでいたアップルフリークの連中が、「ジョブズ」という名前を連呼していたのである。

 彼らにとって、ジョブズとウォズ(スティーブ・ウォズニアック。ジョブズとともにアップルを創立した技術者)は、まぎれもないヒーローだった。

 ヒーローといっても、尊敬や信仰の対象ではない。アイドルに近いかもしれない。
 ちょうど、学生だった頃の私がジョン・レノンやボブ・ディランにカブれていた感じに近い。彼らは時に馴れ馴れしく、時に親しみをこめて「ジョブズ」と呼んでいた。

 私自身は、まるっきりのアップル・フリークというわけではなかったので、真正面からジョブズにカブれることはなかった。というよりも、私にはそうするだけのカネがなかったのだ。

 当時、ジョブズにカブれるためには、それなりの資金(金額もさることながら、一身を捧げるという意味での「寄進」)が必要だった。私自身は、アップルに憧れてもいたし彼らの作るカルチャーが大好きでもあったが、自分にはアップルファンを名乗る資格が無いと思っていた。理由は、自分にはまだ献身が足りないと考えていたからだ。当時、ファンであるためには、「身をやつす」必要があった。現在、AKBのサポーターをやっている皆さんと似た状況かもしれない。肝心なのはどれだけ犠牲を払っているかで、私はその意味で、ジョブズをファーストネームで呼ぶに値しない人間だったのである。

コメント48件コメント/レビュー

「リンゴが落ちることを発見した男によって切り開かれた時代が近代であるとするなら、現代は、リンゴに歯形を付けた人間のインスピレーションに沿って動いている時代だ。」感動しました。(2011/10/11)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「毀誉褒貶の中を生きたジョブズ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「リンゴが落ちることを発見した男によって切り開かれた時代が近代であるとするなら、現代は、リンゴに歯形を付けた人間のインスピレーションに沿って動いている時代だ。」感動しました。(2011/10/11)

なにか物知り顔でジョブズ氏はすごいと語る人が多いが、本当に実感している人はどれくらいなのだろう。受け売りしている人は結構いるものと思う。私は彼は商売上手と思うが、何がすごいのか分からない。ウォークマンを作った人との違いは。自転車、ミシン、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、クーラー、自動車、電話、無線機など日常生活を変えるものを作った人との違いは何。核分裂の利用を始めた人との違いは何。コンピューターを作った人、その元となる半導体電子部品を作った人との違いは何。よく分かりません。。。(2011/10/11)

故人に敬意を表するのは当然だし、それなりのことをなし遂げた人物であるのもたしかだが、少し持ち上げすぎでないかとは思う。果たして亡くなったのがジョブスでなくゲイツだったらどうだったか。単なるビジネスマンのゲイツとジョブスを一緒にするなという声も聞こえてきそうだが、今もアップル社の時価総額がMSを上回っていなかったら、このような持ち上げ方をしただろうか。商品化への情熱は傑出していたが、経営の才覚ではゲイツに及ばず、アイデアの斬新性ではアラン・ケイに勝っていたとは思わない。ハードとソフトを分離し、ソフトのプラットフォームを押さえて大儲けしたのがゲイツだとすれば、ハード・ソフト一体化に固執して一度はマイナーになったが、ポータブル分野ではハード・ソフト一体化が逆に功を奏して、プラットフォームを押さえることに成功したのがジョブス。一体化していたがゆえに大儲けできたのだ。しかし、いずれそんな大儲け、ひとり勝ちできる時代でなくなるのは目に見えている。世の中そういうものだ。私は日本語入力がスムーズにできればいいという実用のみを重んじ、指でページがめくれなくてもいいと思う人間なので、Macユーザの皆さん、悪しからず。(2011/10/10)

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