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神が判断する善悪を人が理解することは可能か?

日本社会に生きるムスリム5

  • 佐藤 兼永

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2011年10月18日(火)

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 今回から数回にわたり、日本人ムスリムがどのようにイスラム教を受け入れ、伝統的なイスラム教の解釈や、外国人である夫との関係において信仰と向き合っているかを見ていく。

 この話は、日本社会が彼らをどう受け入れるかという話とは直接は関係ない。しかしムスリムの側が日本社会と折り合いをつけようとする上で、どのようなダイナミズムが背景にあるのかの理解につながると思う。

 前回、前々回と見てきた子どもの教育や子育てに関わる問題で、もう一つ見逃せないのが、親自身のイスラム教との向き合い方だ。ムスリムとしての教育をどこまで子どもに施すかは、親の信仰心の強弱だけでなく、親がイスラム教をどう解釈するかも左右する。

 東京都福生市に住む日本人ムスリムである大槻順子さんの場合、彼女のイスラム教観が子どもの教育に影響を与える以前に、子育てが彼女のイスラム教との向き合い方に影響を与えた。

 大槻さんは18歳でイスラム教に入信。それ以来、礼拝などの信仰行為を真面目に実践した。イスラム教の教えには納得できないものもあったが、それでも受け入れようと努力してきた。しかし長男が生まれ、子育てをするようになったことがきっかけで、イスラム教との向き合い方が変化してきたという。

「若気の至り」で入信

町内会の会合で発言する大槻順子さん。「自分にとってイスラム教は信仰の根幹にすぎない」と語る大槻順子さんは、自分はムスリムとムスリム以外を分ける境界線上に立っていると考えている。彼女は「私、どこに行っても浮いているかも」と言う。中学生の時、一人でビジュアル系バンドの追っかけをやっていた。仲良しグループ20人の誰にも共感してもらえなかった。バブル末期に在学していた成城大学では、周りがコンサバな格好をする中、ひとりだけインドものの木綿の上下の服を着ていた。「上下柄物の女」と呼ばれていたと言う。

 大槻さんは、大学1年の時にイスラム教に入信した。今から19年前の18歳の時だ。大学で文化人類学を専攻していた彼女は、「卒論のための調査について今のうちから考えておくように」と1年生の時に教養学部長に言われ、当時「なんとなく」興味を持っていた中近東に調査に行きたいと考えた。そして、イスラム圏に調査に行くならば、ムスリムになっておいた方が何かと便利だと思いムスリムになったという。

 彼女は「『取りあえずなっとけば? 別に普通の生活をしてもいいじゃん』みたいな人も見てたので、軽い気持ちでなりました」と言う。

 入信に踏み切った背景には別の要因もあった。それは彼女が大学生だった頃の時代背景に起因する。

 「バブルの最後の頃で、世の中的に、学生はバイトして飲んで終わってるっていう風潮だった。そうした周り人と価値観が食い違う中で、留学生の方が話が合った。『あ~面白い。この人たち面白い。世の中、外に出るとすごく面白い』と思った。さらにイスラム圏がアンチ・アメリカな雰囲気で、私にはちょうど良い感じだったんですね」

 動機は純粋とは言えなかったが、いざムスリムになってみると、『やるんだったら本気でやろう』という思いがわいてきた。礼拝を始めてみると、自分が礼拝を必要としていることに気づいた。『大学を卒業してから先どうなるか』という不安を抱いていた彼女は、礼拝をすることで思考がクリアになり、自分のことを見つめ直すきっかけになったという。これまで礼拝をしてこなかったことが不思議なくらいだったという。礼拝を必要とする時期は、それから6年ほど続いた。

 大槻さんは、大学2年生か3年生の時にガーナを訪れた。縁があって、ガーナにおけるムスリム女性の問題を卒論で取り上げることにしたからだ。ガーナのムスリムは総人口の15%程度と少数派であり、イスラム圏とは言えないかもしれない。しかしイスラム教が土地に根を張った国だ。入信して比較的日が浅い時期に、そこに調査に出向いたことはムスリムである自分にとって良かったと考えている。現地に行くことで、その土地の生活に根ざしたイスラム教というものを理解することができた。

 例えば砂漠で暮らしていると水は大変貴重なものだ。砂漠での生活では身体はすぐに埃まみれになってしまう。しかし礼拝のためにモスクに行けば、お浄めをするために缶に1杯分の水をくれる。その水の本来の役割は礼拝の準備だが、お浄めをすることで、埃まみれの身体をきれいにすることができる。

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