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原発、未来世代に刃を向けるのか

加藤尚武氏、安全性工学への疑問を語る

  • 藍原 寛子

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2011年10月19日(水)

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 「私はこれからどう生きていったらいいのか、真剣に考えています」
 「子どものために、次の世代のために、私たちは何ができるのでしょうか」

 取材の中で会う人々から、思いがけず哲学的な問いが発せられることがある。それは珍しくなく、震災後に人々が生き方を模索していることを痛感させられる。生きる中で発せられる、命や環境についての問いが、心の中から湧き出しているのだ。

 原発による放射能汚染と「原子力ムラ」、福島のお母さんたちの活動や行動、そして次の世代。今、フクシマで起きていることについて、環境倫理学、生命倫理学、応用倫理学の第一人者で、来月には新著『災害論 安全性工学への疑問』(世界思想社、11月10日発行)を上梓する哲学者の加藤尚武氏にぶつけてみた。

 加藤氏は原子力委員会専門委員、日本哲学会委員長などを歴任、新著では「原子力発電のコスト」「『原子力ムラ』の存在」「原発事故とリスク・コミュニケーション」など原発の安全と技術、復興までを述べている。

原発事故の予見不可能の抗弁は認めない

原発の課題について、環境、次世代とさまざまな角度から述べる加藤尚武氏

 今回の原発事故については、東電や国は、「予見できない地震や津波で想定外の事態であった」と言う。加藤氏は『災害論』で、原子力工学の学者のなかにH.W.ルイスの「確率論的安全評価(PSA)」、「低い確率で大きな損害=高い確率で小さな損害」という等式を語る人がいることと、「安全のコストをなるべく低く抑えようとして『安全対策のやりすぎ』を何度も批判する」というルイスの考えの危険性を指摘している。

 「原発は、もし失敗したら、とんでもない大きな被害が起きることが設計段階から分かっている。だから、原発の場合には、予見不可能の抗弁は認められない。『これは予見できなかった』という言い逃れは認めないという建前を作ってから、原発を始めている。だから、マグニチュード9だろうが10だろうが、地震が起きたら原発をどうするか、ということを考えないといけない」

 「今回の原発事故は、予想もつかないほどの天文学的な額のお金を使わなければ予防できなかった事態なのか、それとも常識的な範囲内で予算を取っていれば大丈夫だったのか。私は、常識的なお金を使って安全対策を取っていれば、あれほどの事故は起きなかったと思う」

 安全へのコスト抑制と、「安全対策はやりすぎ」と批判することについて、厳しく批判している。

「反対派を排除」構造的な欠陥

 今回の事故では改めて、東電や国と、国民の間での「情報の非対称性」が浮き彫りになった。東電や国が圧倒的に大量の情報を持っており、国民が独自に検証できる材料が少ない。そのために、国民の適切な判断を鈍らせている面もある。この圧倒的な「情報の非対称性」の前で、真実の追求は可能なのだろうか。

 「『災害論 安全性工学への疑問』にも書いたが、今まで原発事故が起きるたびに、情報隠しや事故隠しが起き、それが何十年と続いている」

 「もともと日本においては、原子力発電に対する反対意見は非常に強かったわけで、その時に原発事故の情報を流すと、反対派が勢いづいてしまって、原子力の開発にとって都合の悪い社会情勢が作られる。だからなるべく悪い情報は出さないという事故隠しの基盤が作られたと思う」

 「反対派の勢いを強めないために、なるべく情報は外に出さないと言う体質が、日本の原子力行政、あるいは原子力管理に沁みついてしまった」。

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