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青年がいなくなった日本と欧米のデモ

2011年10月21日(金)

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 ウォール街ではじまったデモは一向におさまる気配を見せない――というこの話題は、実は、先々週の当欄でとりあげるつもりでいたものだ。それがジョブズ急逝の報を受けて翌週送りになり、週が変わってみると、今度は「アラちゃん」登場のあおりを受ける形で、さらに今回にズレ込んでいる次第だ。要するに、ショボいネタだったということなのだろうか。違う。非常に重大かつ興味深い問題だ。ただ、私自身がうまく対処できていないというだけだ。だから、迷子のあざらしなんかに蹴散らされてしまったのである。

 定期刊行の媒体に時事コラムを書いている人間(あるいは、もっと大きく構えて「報道に携わる者」と言い換えても良いが)にとって、世間の話題は、おおよそ以下の3つのカテゴリーに分類できる。

 一つ目は、「面白そうな話」。これは扱いやすい。この種のネタに関しては、思ったことを思っている通りに書けば良い。当たっているかどうかは、書いた当人には分からない。紙飛行機の着陸地点と同じだ。というよりも、書き手が面白がっている話は、書き始めた時点で完結している。だから、読み手の側から見ると、独善にしか見えなかったりする場合も多い。当たり外れの落差は大きい。でも、書き手にとっては無視できない。触れざるを得ない。
 読んで怒る人もいる。
「なんだこれは。ステーキだと思って食べたらちくわじゃないか」
 ええ、そうです。責任はナイフとフォークを持ち出したあなたの側にあるということです。ちくわはちくわ。食べ物だと思うから腹が立つのであって、あれはむしろ携帯用の覗き穴だったのかもしれませんよ。

 二つ目は、「分からない話」だ。ひと通りの関心は払っているし、自分なりに色々と考えてもいる。でも、どうしてもうまい解釈を見つけることができない。だから、扱いにくい。書いたとしても、まず失敗に終わる。当然だ。だって、書いている本人が、自分の原稿を理解していないわけだから。

 三番目は「興味のない話」だ。
 実は、コラムニストにとって、ヘッドラインの80パーセントはこの枠組みに分類される。しかも、このパーセンテージは加齢とともに増加して行く。加齢なる一族。私の例で言えば、AKB48総選挙あたりの話題がこれに相当する。分からないよりもずっと悲惨な状態だ。分かろうとする努力自体が重荷なのだからして。理解することは一生涯不可能だろう。

 さてしかし意外なことに、ここのカテゴリーの話題は、原稿にすることができる。というよりも、正直に申し上げるなら、興味を持てないネタは、むしろ扱いやすい。というのも、冷蔵庫から出してきた素材は、板前が魚をサバくみたいな調子で包丁を入れれば良いわけで、この種の仕事は、プロの料理人にとっては、手慣れた流れ作業の一部だからだ。メディアの人間は、実際のところ、ほとんどの場合、興味の無い事柄をいじくりまわす形でニュースに関わっている。不誠実な態度だと思う皆さんもいるだろう。が、仕方がないのだ。甘いものが嫌いなパティシエだっているし、ミッキーマウスの中の人が心の底からミニーマウスを愛しているのかどうかは、プロ意識とは別の問題なのだからして。

 世の中には並外れてアタマの良い人間がいて、そういう人なら、あるいは世界中のあらゆるニュースを理解して説明して報道することができるかもしれない。でも、どんな天才でも、世界中のニュースのすべてに興味を持つことはできない。絶対に無理だ。どんなにエネルギッシュな人間であっても、新聞の紙面の少なくとも半分は、どう読んでみても、やっぱりつまらないものなのだ。

 デモの話題は、私にとって、二番目のカテゴリーに属する。すなわち、なんだかよく分からないのだ。
 もちろん興味は持っている。時間を割いて考えることもしている。資料を読んだり、調べたりということのために労力を費やしてもいる。にもかかわらず、どうしてもはっきりとした答えを見つけることができずにいるのだ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「青年がいなくなった日本と欧米のデモ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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