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「やっぱり女なんだ」の一言が教えの意味に気づかせた

日本社会に生きるムスリム6

  • 佐藤 兼永

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2011年11月1日(火)

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 今回は、現在進行形でイスラム教を受け入れつつある一人の日本人女性ムスリムを紹介する。伝統的なイスラム教の解釈を受け入れている日本人ムスリムも、様々な思いを巡らせた上で信仰を自分のものにしていることを理解してほしい。

 助産師で、聖路加看護大学大学院で国際看護の博士前期課程に在籍している田村千亜希さんは、4年前にコートジボワール人の夫と結婚したことをきっかけにイスラム教に入信した。

 「夫を見ていて、『イスラムって何なんだろう』と思うようになりました。本屋さんに売っているイスラムの本とかを自分で調べて、『私もムスリムとして生きていくのがいいのかな』と思い、自分から夫に宣言しました。私はイスラムになると。夫はその時までお祈りも自分だけでやってたし、ぜんぜん強要はしなかったんです」

 納得して入信したものの、田村さんはイスラム教の教えや考え方のすべてを最初から受け入れられたわけではない。

 「お祈りも、夫みたいに、すべて時間通りにやってはいません。授業と被ったら授業に遅れてまでお祈りはしません。まとめて、やったりはしちゃってますね」

 田村さんは、とある個人病院で助産師のアルバイトをしている。職場の同僚は全員、彼女がムスリムであることを知っている。しかし彼女が職場の片隅で礼拝することがあるのを知っている人は限られている。

 田村さんがイスラム教を受け入れる上で経験してきた苦労や葛藤のほとんどは、旦那さんとの関係に起因している。彼女の夫は母国の高校を卒業すると、サウジアラビアに渡りマディーナ大学でイスラム教について学んだ。田村さんは夫が他の多くのアフリカ人ムスリムよりも“厳格”である理由を、サウジアラビア留学経験にあると考えている。

 田村さんは夫のことを話す時、厳格という言葉を頻繁に使う。しかし話を聞いていると、“厳格”であることの対象は、マナーなど生活上の些細なことに関するものが多いことに気づく。

 例えば夫の“厳格さ”の一例として、「いただきます」や「ただいま」といった言葉をちゃんとアラビア語で言うように“生活指導”を受けていることを彼女は挙げる。

 食事中も注意される。「夫はとても厳しい敬虔なムスリムという感じです。絶対に左手で食べてはいけない。左手で食べていると『何をしてるの?』と怒られる」

 これには、さすがに納得できず、ムスリムの知り合いに相談した。「イスラムに精通した人に聞くと、そこには文化の問題が混じっていると言う。『そんなに苦痛に感じるならちゃんとご主人と話して、左手で食べることを許してもらったら?』と言われたことがあった」

 そこで改めて夫に話してみた。返ってきた返事は「それは駄目でしょ」の一言だった。夫に従うしかないと考えた。「私にとっての(ムスリムとしての)教科書は、コーランでなく夫なのかもしれません」。

半そでの制服に夫が不満

 田村さんの旦那さんは、彼女が仕事をしていることも快く思っていない。勤務中はスカーフを被らないだけでなく、制服の白衣は半袖だ。そのことが夫婦間の摩擦の種になる。

聖路加看護大学の大学院生ラウンジで同級生と研究のブレインストーミングをする田村千亜希さん。田村さんは修士論文のために、日本在住ムスリム女性の出産にまつわる問題を研究している。彼女が指導教授は、パキスタンの医療事情などを調査した経験を持つ。初めて会った時、スカーフ姿の彼女を一目見て「あなたの研究テーマは決まりましたね」と言ったという。

 かつて、ある書類を彼女から受け取るために、旦那さんが彼女の職場を訪ねた。受付の人に書類を託し、夫が来たら渡してくれるようにと頼んだ。しかし彼女は結局、訪ねてきた夫に「呼び出され」(田村さん)会わなければならない形になった。

 「『どうしよう。私、着替えようかなぁ』って言ったら、職場の人が『そんなに大変だったら、私が行ってきてあげようか?』って言ってくれました。でも、『大丈夫です。この姿で行ってきます』って言ったんです」

 旦那さんは彼女の制服姿を見て、仕事を辞めろとは言わなかった。しかし「上司と話をして、長袖とスカーフ姿で働けるようにお願いするべきだ」とは言った。それも1度きりではなかった。それから数カ月の間、2週に1度は上司に話したかと聞かれた。

 彼女としては、旦那さんの気持ちを慮ってあげたい気持ちもある。しかし最終的に重視したのは助産師としてのプロ意識だった。自分の信仰も大事だが、医療従事者としては、何よりも患者の治療のために最良の環境を提供することを最優先したかった。

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