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立ち上がった2つの「被ばく手帳」

被爆者も協力、医師が監修、市民の手で完成させた

  • 藍原 寛子

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2011年10月26日(水)

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 福島県内で、2つの市民グループが独自に作成した、いわゆる「被ばく手帳」が、子育て中の家庭や住民ら希望者に配布されている。

 いずれも「将来、万が一、健康被害や治療などが必要になった際には、被ばく推定値を算定したり、訴訟や補償のための資料にする」ことや、「日常生活のなかで、被ばく低減に取り組むための記録」「健康管理のための個人個人の記録」「放射能について知識を深める」ことなどを目的に作成。県外に避難した人や、関心のある人からの問い合わせも寄せられている。

 市民グループには「ともに震災と原発事故を体験した人たちで集まって内容を記入したり、勉強会の開催などで活用してほしい。避難でバラバラになってしまった住民の交流を取り戻すきっかけにもなれば」との願いもある。

完成した手帳を手に「分断された地域コミュニティを復活させるきっかけになれば」と話す「負げねど飯舘(福島弁で「負けないぞ飯舘」)」の佐藤健太さん

 1つ目は、飯舘村の若者グループ「愛する飯舘村を還せプロジェクト 負げねど飯舘」が作った「健康生活手帳 行動記録」である。中心になって活動している同グループの常任理事・佐藤健太さんは「村民一人ひとりが詳しい行動記録を手元に残しておけるよう、手帳の作成を進めました」と作成の目的を語る。

 寄付金300万円を元に作られ、現在は19歳以上の村民を訪ねて手配りしている。飯舘村も、負げねど飯舘が作った手帳の内容を参考にして、18歳以下の子どもを対象にした村の健康手帳「までいなからだ(飯舘村で使われてきた言葉、「大事に」「思いやりを持って」の意味)」を作成し、配布した。村の若者グループの活動が、行政を動かした格好だ。

 遠方からの問い合わせもあり、放射線への知識を深め、健康への意識を高めてもらうことなどにも使ってもらおうと、負げねど飯舘では、ホームページから無料で閲覧・ダウンロードができるようにした。チャリティで協力してくれる人や、冊子で欲しい人などには、1冊1000円で販売している(申し込みはホームページから)。

「住民目線」の手帳目指す

 手帳作成の準備は4月から始まった。広島県や長崎県の被爆者から「被爆者手帳」を見せてもらったり、話を聞くなどの取材を重ねた。振津(ふりつ)かつみ医師(兵庫医科大学非常勤講師)や、木村真三独協医大准教授らの監修で内容を練った。

村の若者グループが作成した「健康生活手帳」(左)と、村の子ども健康手帳「までいなからだ」(右)

 福島市内にある市民グループ「市民放射能測定所」と情報交換したり、6月以降に始まる県の「県民健康管理調査」の先行調査で使われる問診票の情報も得ながら、県の問診票より飯舘村民が書き込みやすく、行動記録に必要な要素を網羅できる内容に仕上げた。

 県の県民健康管理調査の問診票で、詳細記入欄は3月11日から25日までの2週間であるのに対して、この手帳では4月末まで詳細記入できるほか、行動記録欄を来年2012年3月31日まで設けた。記録のページのほか、領収書やメモが入れられるビニールのポケットもつけるなど工夫し、「住民目線で実際に使いやすい手帳」を目指した。

 手帳に記録する意義は、以下のようなものだ。

・長期にわたる健康管理や「定期健診」に役立つ
・放射能被ばくに起因する「病気や健康被害」の治療費請求や、手当支給時に役立つ
・国や東電の損害賠償交渉を行う上で、肉体的・精神的な損害を説明するのに役立つ

 現時点では、今回の原発事故に対して、国が責任を持って検診や健康管理、医療費支給、健康被害への補償を行うための「制度としての被ばく手帳」がない。そのため、今、自分たちでできる作業を先行し、被ばく手帳が制度化された後、治療費請求や手当支給をスムーズに行えることもメリットとして挙げている。

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