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「攻撃を撃退するに忍従にまさるものはない」

抵抗する[6]――正義について考える【30】

2011年11月17日(木)

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戦争へ向かうユダヤ

 ガイウス帝は、ローマに「おのれを神として祀る固有の神殿を建て、これに仕える神官団と非常に凝った生け贄を定めた。この神殿にはカリグラと等身大の黄金像がたち、彼が用いていると同じ服装を毎日つけていた」[1]という。皇帝が毎日、服装を変えると、きっと神殿の像も着替えをしたのだろう。それでも人々に恐れられ、憎まれていた皇帝はあっさりと暗殺されてしまう。

 その後を継いだのはクラウディウス帝だったが、一三年ほど帝位を守った後に、死去し、ネロが皇帝の位を継ぐことになった。カリグラをしのぐほどの暴虐と狂気のふるまいを示すネロの時代に、ユダヤの国では叛乱の気配がますます高まった。ヨセフスは「いかさま師や野盗たちが結束して、大勢の者たちを叛乱へと駆り立て、自由のために立ち上がるように呼び掛けた。ローマ人たちの支配に唯々諾々としたがっている者たちには死で報いると脅し、自らの意志で隷従の道を歩んでいる者たちを力づくで押さえつける」[2]と脅迫したのだった。

 そしてエレサレムにはシカリオイと呼ばれる暗殺者集団が暗躍し、人混みの中で突然刃物をふるって、人々を暗殺して歩くのだった。最初のターゲットは大祭司ヨナテスだった。「誰もが戦場にいるかのように、時々刻々死を覚悟した。人々は遠方から敵対する者たちを見張り、友人たちでさえ近づいてくるときには警戒した」[3]ほどだった。

 そのような情勢にあって、ローマからユダヤの国に派遣されたのが、「略奪からえられる利得に目を奪われ」[4]て、無実の多数の人々を殺害する暴挙にでるような総督フロロスだったことはいかにも不幸なことだった。フロロスは、ローマ帝国に対する叛乱を起こさせて、さらに大きな富みをえようと企み、ローマの兵士たちをエルサレムに派遣し、フロロスを非難する言葉を人々が吐くようなら武器を使うように命令したのだった。

アグリッパ王の説得

 そしてローマの兵士たちがやってくると、過激派は早速フロロスを咎め、兵士たちはエルサレムの城内に突入し、人々に暴行を加えた。もはや戦争状態だった。フロロスはこの機に乗じて、神殿に入り込んで「神の宝物」を手に入れようとしたが、人々が神殿の入り口をふさいで、どうにかこれを阻止したのだった。

 そこで人々は皇帝ネロに使節を派遣して、フロロスを告発しようとした。フロロスの悪行を告発しないと、最初に手を出したのがユダヤ人だとされてしまうからである。そして使節の派遣を王のアグリッパに要請した。アグリッパはこの要請を聞いて、人々を説得することにした。

 アグリッパはまず、ローマの権力が強大であって、抵抗することが空しいことを指摘する。ローマから派遣された歴代の総督はたしかに暴虐だったかもしれないが、「権力は奉仕すべきものであって、苛立たせてはならない。おまえたちが小さな過ちを取り立てて大袈裟に非難すれば、逆におまえたちが返り血を浴びることになる。彼らはこれまでのようにこっそりと、しかも後ろめたさをもっておまえたちを欺くのではなく、公然と略奪するだろう」[5]と。アグリッパは、叛乱を起こすのではなく、ただひたすら耐えることを求める。「攻撃を撃退するに忍従にまさるものはない」[6]と。

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「「攻撃を撃退するに忍従にまさるものはない」」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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