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スパルタクス軍の合意と合議の思想

抵抗する[8]――正義について考える【32】

2011年12月1日(木)

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スパルタクスの反乱の諸段階

 スパルタクスの叛乱は、ほぼ四つの段階に分けることができる。蜂起からトウリイ占領までの初期、アルプス越えを目指して北上した段階、南下してローマ軍と戦い、シチリア島の対岸に到達した段階、ブランディシウムへ向けて最後の戦いを挑んだ段階である。それぞれの段階について、特徴を調べてみよう。

 前七三年の春、カプアで七〇名ほどで起こした叛乱だったが、南イタリアのカンパニア地方は穀倉地帯であり、五月から六月の農繁期にさしかかり、「奴隷の集団労働がもっともはげしく展開されるとき」[1]だった。「収穫期に入った六月のカンパニアでは、奴隷のはげしい集団労働が連日のように展開されていた。しかし奴隷軍の進出の前に、カンパニアの農場では、その鎖をたちきって、奴隷は収穫物や略奪物をもってぞくぞくと奴隷軍に投じてくるのであった」[2]

スパルタクス軍の特徴

 このスパルタクス軍の特徴は、軍の評議会での大衆的な討論によって方針が決定されていたということにある。スパルタクスが指導者であったのも、大衆によって選ばれたからである。これはゲルマンやガリアの社会ではごく通例のことであった。カサエルはこれよりも数十年後のガリアの部族の軍隊について次のように語っている。「部族が戦争したり、しかけられて防いだりする場合には、戦争を指揮して生死の権を握る首領が選ばれる。……会議で有力者の中の誰かが自分で指導者となろう、賛成の者は出てくれ、という時、その目的と人物を認めれば、立ち上がって助力を約束し、その人は皆の喝采をうける」[3]。ゲルマン民族についてはタキトゥスが「彼らは王を立てるにその門地をもってし、将領を選ぶにその勇気をもってする」[4]と語っている。前回紹介した獲物の平等な分配とともに、これは原始共同体にみられる民主的なありかたを特徴とするのである。

 スパルタクス軍でも投票によって三名の指導者が選ばれた。スパルタクス、クリコス、オエノマウスである。オエノマウスは蜂起の初期の段階の戦闘で死んでしまうが、スパルタクスとクリコスの二人は軍の指導者として協力して軍を導きつづける。さらに戦術の決定についても軍会で議論が行われ、指導者は軍会で決定された方針を尊重したようである。この軍隊は、古代のゲルマン民族的な原始共同体的な合議制によって、その方針を決定したのである。軍の方針が兵士たちの合意と合議のもとで行われることが、この軍がローマの軍隊と比較して優れた力を発揮できた理由でもあり、その敗北の間接的な原因でもあったようである。

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「スパルタクス軍の合意と合議の思想」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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