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イスラム教の教えではなく、人としてのムスリムに目を向ける

違いだけに目を向けた異文化理解では不十分

  • 佐藤 兼永

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2011年12月6日(火)

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 今回は、「イスラム教をどう理解するか?」という問について考えてみたい。ムスリムでない限りイスラム教を完全に理解することはできないという結論に至る。しかしイスラム教を理解することにこだわるよりも、ムスリムがイスラム教を信じていることを尊重することの方が重要だ。

 イスラム教を完全に理解することが難しいことを示すため、「最後の審判」を例に取ろう。

今年の5月に福岡マスジドで開かれた周辺住民との交流会で、ムスリムの女性にイスラム教についての質問をする参加者たち。交流会での講演や、その後の質疑応答では豚肉を食べない理由や酒を飲まない理由、あるいは女性がスカーフを被る理由や一夫多妻制の実状などが話題に上った。

 イスラム教では、最後の審判が、人が裁けない罪悪――「良心」に従ってイスラム教の教えを実践したかどうかなど――を含めた人間の罪悪を裁く。例えば、一夫多妻制を「正しく」実行するかどうかは、夫のムスリムの信者としての良心にかかっている。

 前回も登場してもらった日本人ムスリムの大久保賢さんは、勝手に2番目の奥さんと結婚してしまうようなムスリムがいる背景の1つとして、配偶者ビザ目当てで結婚するケースがあるという。この時、誰が最初からビザ目当てで日本人と結婚したのかを見極めることは非常に難しい。ようは、その夫の良心に質すしかない。

 最後の審判を信じることは、イスラム教の基本的な信仰の1つだ。最後の審判を信じ、恐れるムスリムならば、良心に従って、イスラム教の教えに則って2人目以降の妻を娶っている「はず」である。

 しかしイスラム教などの最後の審判を信じる宗教に帰依していない大半の日本人にとって、最後の審判が、ムスリムが良心を実行することを担保していることは、理解が難しいのではないだろうか。日本では「嘘をつくと地獄に落ちる」と言われる。しかし、地獄の存在は、うそをつくことを抑止しているケースは少ないと考える日本人が大半ではないか。

 最後の審判より以前に、一夫多妻という制度について納得できない人もいるだろう。「一夫多妻が、戦争未亡人を救済するために始まったことなら理解できる。でも、それが現代でも続いていることが受け入れられない」「2人の妻たちを平等に扱うことなどそもそも無理。だからイスラム教が一夫多妻を認めていると考えること自体がおかしい」。

 イスラム教をどこまで理解できるかの限界点は人それぞれだ。しかし、ムスリムでない人間が「ムスリムが理解しているようにイスラム教を理解すること」は無理だと言い切っても、恐らく言いすぎではないだろう。

ムスリムの暮らしから目を背けると、イスラム教への誤解が生じる

 大久保さんは、イスラム教の教えや概念にばかり目を向けて、ムスリムの人となりに目を向けようとしない姿勢に注意を促す。

 「最後の審判のような『概念』について話をすると、ムスリムがどれだけ生き生きと生活してるかが見えないんですよ。概念についての関心だけが先行するから、イスラム教が『異常な洗脳宗教』みたいに思われちゃう」(大久保さん)

ラマダーン中の2010年8月27日に、横浜モスクにおいて。イフタールと呼ばれる断食明けの食事の準備をするパキスタン人男性たち。調理の準備を進めていると、男性の1人が筋でつながった肉の塊を見つけた。それを面白がって、みんなが携帯電話で写真を撮り始めた。

 マレーシア人のムスリムで、神奈川県内の日本企業に勤めるハディヤンさんは、メディアが、日本人がイスラム教を理解する際の壁になっていると考える。メディアは、視聴者や読者が興味を抱く情報を提供するという特性を持つ。それゆえ、イスラム教にまつわるニュースではテロや紛争などのネガティブな話を報道する――というわけだ。

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