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小澤征爾も認めた“男装”の天才琵琶師「鶴田錦史」の人生はなぜ封印されたのか?

第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞作品『さわり』の著者・佐宮圭氏に聞く

  • 山田 真弓

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2011年12月13日(火)

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 2011年11月に出版された『さわり』は、昨年の第17回小学館ノンフィクション大賞の優秀賞受賞作品。これは、不世出の女流琵琶師・鶴田錦史の数奇な人生を綴ったノンフィクションだ。そもそも鶴田錦史の名を知る人は、今の世の中に多くないだろう。鶴田錦史は、しかし、20世紀を生きた実在の人物だ。1967(昭和42)年、ニューヨーク・フィルハーモニック創立125周年記念公演で、小澤征爾らとともに、武満徹作曲の名曲『ノヴェンバー・ステップス』を琵琶のソリストとして演奏し、世界的な評価を得ている。それなのに、小澤征爾や武満徹のような名声を得てはいない。いったい、鶴田錦史とは何者なのか……。

 著者・佐宮圭氏は、この謎多き人物について、10年以上にわたり取材し続け、ここに『さわり』を上梓した。佐宮氏は鶴田錦史の人生に、何を見つけたのか。

(聞き手は山田真弓)

夫に裏切られ、子も琵琶もそして女も捨てた……鶴田錦史とは何者か?

 「鶴田錦史」という女性琵琶師の名前を知っている方は、ほとんどいないと思います。琵琶奏者を見たことがある人、琵琶がどんな音色を奏でる楽器なのか、実際に耳にしたことがある人も少ないでしょう。

 しかし、そんな時代だからこそ、琵琶を聴く価値があると思うのです。琵琶法師たちが伝承した『平家物語』に集約されるように、琵琶は「鎮魂」の楽器です。琵琶には「日本の響き」「命の響き」があります。この琵琶特有の“響き”を途絶えさせぬよう、壮絶なまでに生き抜いたのが、鶴田錦史でした。

佐宮 圭(さみや・けい)氏
1964年、兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、様々な職歴を経て、1993年 2月、フリーライターとなる。学研『大人の科学マガジン』などでサイエンス・ライターとして、日経BP社『日経ビジネス』、日本経済新聞社『日本経済新聞電子版』などでビジネス・ライターとして活躍し、現在に至る。東京都在住。日経ビジネスオンライン「踏ん張る! 日本の技術者たち」、日経トレンディネット「尼崎太郎の科学大好き!」など、連載多数。

 北海道江部乙に生まれた鶴田錦史は、幼少期に兄の命令で琵琶の道に入りました。6歳で上京し、琵琶を習い始め、後に錦心流の速水是水に入門。天才の呼び声も高く、琵琶師として大成したかと思いきや、一度は琵琶から身を引きます。同時に、女としては、結婚してすぐ夫に裏切られ、夫と二人の子どもを捨て、さらには男装して“女”であることすら捨ててしまいます。

 その後、ナイトクラブの経営など実業家として成功を収めたあと、琵琶奏者として復活。現代音楽の作曲家として世界的に知られる武満徹と出会い、尺八演奏家の横山勝也とともに、現代音楽の金字塔、『ノヴェンバー・ステップス』の鬼気迫る演奏によって、ニューヨークで絶賛されるわけです。

 それほどの人物なのに、私が取材を始めた当初、鶴田錦史の過去についてはほとんど資料がなく、証言者も見つけ出せない状態でした。それでも、どうにかして関係者を探し出し、訪ね歩き、そこからさらに伝手をたどり、11年かかって、やっと彼女の人生の輪郭を描くことができました。

 取材を進めていくうち、鶴田錦史に関する古い資料が存在しないのは、彼女自身が自分の過去を「封印」していたからだと分かってきました。自ら封印しなければならなかった人生とは、どんなものだったのか。どんな人生を送れば、あれほどすさまじい演奏ができるようになるのか。

 その答えを解き明かし、琵琶を知らない人にも「命の響き」の魅力を伝える――それが私自身の目標になりました。そのために、鶴田錦史の人生をノンフィクションで、事実に基づいた話だけで、描き出さなければならないと思いました。

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