「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

パソコンの電源を落として今年を振り返ってみる

バックナンバー

2011年12月16日(金)

1/5ページ

印刷ページ

 今年の分の更新は今回が最後だ。
 ということで、今週は特にテーマを設けない。おおまかに2011年を振り返ることにする。

 雑感?
 そう、雑感かもしれない。ビジネスパーソンが最も嫌う言葉だ。
 お前の雑感を黙って聞かされるほどヒマじゃないぞ、と、おっしゃるムキもおありだろう。
 が、世界を動かしているのは雑感なのだ。

 生き馬の目を抜くビジネスの世界は、「情報」や「決断」が動かしているのかもしれない。あるいはイノベーションだとかプレゼンテーションみたいなものが。

 でも、少なくとも、正月の日本は、われら庶民の雑感が支配している。「なんだか紅白歌合戦は、年々トンチンカンになるようだねえ」「ん? なんか言った?」「いいから除夜の鐘まで寝てなさい」そうやって年は明け、また似たような一年がやってくる。世界は前に進んだり後ろに戻ったりしているのではない。われわれは堂々巡りをしているのだ。

 原稿を書く仕事を20年以上続けていて、いまさらながらに思うのは、テーマは外部には無いということだ。
 アイデアは、あらかじめ自分の中に眠っている。
 もう少し丁寧な言い方をするなら、「自分の中で内部化できていないテーマは、書き起こしてみてもロクなものにならない」ということだ。
 青い鳥と同じだ。幸せは自分の中にある。

 たとえば、〆切がすぐそこまできている。なのに、うまいテーマが見つからない。
 よくあることだ。
 こういう時、書き手はどうするべきのだろう。
 答えは、人それぞれ、その時々の状況によって、少しずつ違っているのだろうが、私の場合の方法を書く。

 私は、こういう時、情報を遮断する。
 たいしたことではない。いったん探索をあきらめるということだ。
 ネット上でキーワードを検索して歩いたり、雑誌のページをめくったり、新聞の束をひっくり返したところで、ポジティブな結果は得られない。

 面白い記事を見つけることは可能だ。有用な情報を得ることもできるだろう。でも、それらのデータをそのままこれから書く原稿に使うことはできない。使えばパクリになる。パクリにならなくても、外から持ってきたアイデアに頼った文章は、然るべきダイナミズムを発揮することができない。だから、書き始めてもじきに行き詰まる。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。


関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント37 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン