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成人という「監獄」に入れられる子供たち

2012年1月13日(金)

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 例年、お正月はわりと勤勉に働くことになっているのだが、今年はダメだった。三が日が過ぎても一向に動き出す気持ちになれず、結局、年明けからの10日間ほどを、ほとんど休みきってしまった。

 ツイッターのせいかもしれない。
 昨年の6月にアカウントを公開設定にして以来、私の日常はツイッターに飲み込まれている。ツイッターが生活に入ってきたのではない。どちらかといえば私の生活が、まるごとツイートのネタに変貌している感じだ。

 と、俄然、テレビを見なくなる。
 これは何人かの知り合いの証言を得ている事実でもあるのだが、ツイッターを立ち上げていると、テレビの視聴時間は、かなり劇的に減るのだ。

 前提として、わたくしども21世紀の日本人は、一人で部屋に居る時、常になんらかの情報に接していないと落ち着かない設定の人間になっている。

 だから、ちょっと前まで、私は、見ていようがいまいが、常時テレビをつけていた。ついでに2ちゃんねるを巡回し、雑誌をめくって、おまけに音楽を鳴らしながらガムを噛んでいたりもした。もしかすると、私は、静かな部屋に一人でいるという事態に直面しないために、もがいていたのかもしれない。さびしがり屋なオレ。17歳でもないくせに。まったく、ツールを得た人間はどこまでも堕落することができる。

 さてしかし、そこにツイッターが入ってくると、実は、こいつひとつで大方の用は足りてしまう。この、信頼性もグズグズなら精度もユルユルな、学生のサークルノートみたいにだらしのない舌っ足らずなソーシャルメディアは、意外や、私の情報飢餓をほぼ過不足ないレベルで満たしてくれるのである。

 というのも、私が欲しているのは、有用な情報や正確な報道ではなくて、多くの場合、単に退屈しのぎのネタだからだ。別の言い方をするなら、高度情報化社会の中で原子化した個人に人間らしい輪郭を与えてくれるのは、データよりもむしろノイズであったということだ。さよう。イノベーションだの自己啓発だのについてのご大層なインフォメーションは、私には不要だ。犬にでも食わせてあげてほしい。彼らは喜ぶだろう。

 その点、ツイッターは、思い出したようにジャンクな情報を押し付けて来るそのタイミングが、実にツボを得ている。自室雑踏化装置。ノイズの水道管。行き届いたことに蛇口まで付いている。素晴らしい。感情の下水管かもしれないが。

 ともかく、そんなわけで、今年の正月はろくにテレビを見なかった。
 と、晴れ着を着た女子アナの様子ぶったオホホ笑いに腹を立てることもないし、疲れた顔の芸人のダミ声に悩まされる必要もなくなるわけで、そうなってみると、仕事に逃げ込むべき理由もまた消滅してしまう。だから、今年の正月は仕事をしなかった……というのは、いくらなんでもとってつけた弁解に聞こえるかもしれない。が、現実に、昨日あたりからテレビを見始めて、いま私はこうやってワープロに向かっている。テレビは、ああ見えて画面のこっち側にいる人間に自覚を促す役割を果たしているのである。

 久しぶりにテレビを見ると本当にあきれる。
 また今年も成人式のニュースをやっている。

 メディアが毎年同じ日の同じ時間帯に国際通りの定位置に陣取って取材カメラを回しているという既定の事実が、揃いの羽織袴を着たチームの連中に、カメラの前で泡盛をラッパ飲みしてみせるための有力な動機を提供していることは、いまさら私が手柄顔で指摘することでもないのだが、それにしても、このニュースは、あらかじめ各方面に台本が配られているみたいな調子で配信されてくる。その手際のあざやかさに、私は毎回鼻白んだ気持ちになる。見ているこっちがうんざりしているのに、伝えている彼らはうんざりしないのだろうか。

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「成人という「監獄」に入れられる子供たち」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官