東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、勤務先の休業に伴う減収や避難に伴う支出増、心身への負担への慰謝料など、被害者が東電に対して行う損害賠償請求手続きが始まった。東電は、震災当日の昨年3月11日から8月31日までの分を1期、以後3カ月ごとの賠償期間を示し、賠償金の算定と当事者交渉、和解などの手続きを進めている。
分厚く、分かりにくい東電からの書類
しかし、東電から被災者のもとに送られてきた資料は、何ページもある分厚い書類である上に、記入方法も分かりにくい内容。賠償基準の金額も被災者からみれば満足のいく内容ではなく、「書きにくい」「どうやっていいか分からない」「賠償額が低い」との不満が殺到していた。

こうした問題に対応するため、南相馬市原町区(旧原町市)の6行政区による「ひばり地区復旧・復興対策会議」(小松恒俊会長)は今月、原発被災者弁護団(丸山輝久弁護団長)ら弁護士の協力を得て、裁判外紛争処理(ADR)を行う機関「原子力損害賠償紛争解決センター」に、集団申し立てを行う方針を固めた。同時に、南相馬市原町区の住民が被った損害の現状をより的確に申し立て書類に反映させるため、独自に「南相馬版・和解仲介申立書」と、「基礎計算書」を作成。小松会長ら被災者が中心となって、同じ被災住民に対する説明会を始めた。
集団申し立てを実施するにあたり、同対策会議は、具体的に東電との争点を3つ挙げた。
まず「精神的負担の慰謝料の基本的考え方」として、賠償期間(終期)について「3月11日以前の空間線量0.05μSV(マイクロシーベルト)に戻るまで、精神的負担の慰謝料を請求する」としている。
南相馬市は福島第一原発から20〜30キロメートル圏に入る地域があり、屋内退避、緊急時避難準備区域、計画的避難区域の指定を経て、現在は警戒区域、計画的避難区域、特定避難勧奨地点などが混在し、区域指定に関して市が分断された格好になっている。政府は3月にも長期間にわたり帰還が難しい「帰還困難区域」、数年間は帰れない「居住制限区域」、年間被ばく線量が20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」の新しい3区分に設定すると発表している。
賠償を考える住民の側は、新たな区域分けに伴って「被災地から外される地域」が出ることを懸念しており、政府が決めた3区分ではなく、実際の放射線量で終期を定めるよう求めている。
また、精神的負担の賠償金額は、政府の原子力損害賠償紛争審査会が自動車損害賠償責任保険における慰謝料(1日4200円、1カ月で12万6000円)を参考に、「1人当たり月額10万円(避難所や体育館、公民館等への避難者は1人当たり月額12万円)」を提示。住民側は「十分ではない」とし、自宅で避難生活した人も、南相馬市以外で避難した人も同額の1人当たり35万円(体育館や公民館等はプラス5万円)とすることなどを求める。

知人や親戚の家などに避難した際の宿泊費については、領収書がないことが多く、賠償請求できない問題が生じるが、これに対して住民側は「知人・親戚宅も一つの避難所とみなす」こととし、1日1人5000円で計算。特に子どもを持つ家庭は、放射線の影響を特に心配していることから、「子どもを心配する親の精神的苦痛」を慰謝料として盛り込み、子ども1人あたり毎月5万円を請求することとした。
独自の申立書や基礎計算書の作成に尽力した小松会長は、次のように問題点を指摘する。「賠償請求の際、まずは難しい内容の申請書類をどう書くかという問題が起きた。東電の書類の様式も、私たちが被った被害を的確に反映して記入できるものではない。精神的賠償金額が1人当たり10万円というのも低すぎる」
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フリーランスの医療ジャーナリスト。福島県福島市生まれ。福島民友新聞社で取材記者兼デスクをした後、国会議員公設秘書を経て、現在、取材活動をしている。米国マイアミ大学メディカルスクール客員研究員として米国の移植医療を学んだ後、フィリピン大学哲学科客員研究員、アテネオ・デ・マニラ大学フィリピン文化研究所客員研究員として、フィリピンの臓器売買のブローケージシステムを調査した。現在は福島を拠点に、東日本大震災を取材、報道している。フルブライター、東京大学医療政策人材養成講座4期生、日本医学ジャーナリスト協会員。

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