
インフルエンザに罹患しました。診断によればA型です。風邪や腹痛を含めて、寝込んだのは5年ぶりぐらいでしょうか。久々の隔離生活です。
発症から丸4日は寝て過ごした。その間、ほぼ何もしていない。食事と服薬と睡眠。合間のツイッター。それだけだ。
現在、本原稿執筆の時点が発病5日目に当たる。すなわち本テキストが復帰第一稿ということになる。貧乏性の咳唾が珠を成せば御同慶、瓦に化けたとしても、ウイルスよりは上等、と、そう思って読んでいただけるとありがたい。
症状自体は、2日目に病院で処方されたタミフルを服用して以来、劇的に改善している。3日目の夜にはほぼ平熱に戻った。現在は、完治と申し上げて良いと思う。
外出は、自粛している。まだウイルスを排出しているかもしれない段階だからだ。
蟄居5日目ともなるとさすがにうんざりしてくる。手足から根が生えてくる感じだ。
秋口からこっち、あんなにも怠惰な暮らしにあこがれていたというのに、それが実現してみると、一週間と持たない。手もなく退屈している。下層民由来の勤勉がDNAに刻印されているということなのであろう。哀れなものだ。
貧乏な貴族は珍しくないが、勤勉な貴族というのはあり得ない。してみると、私は徹頭徹尾庶民なわけだ。一億ドルとギリシャの島をプレゼントされても、私は決して貴族にはなれないだろう。ちまちま働いて、うじうじ考えこんで、死の直前までジグソーパズルのピースみたいなやくたいも無いものを探して動き回っているはずだ。
病気で寝ることは、ふだん考えない角度からものを考えるという意味で、貴重な機会だ。
何かのなりゆきでシステムがダウンしたら、とりあえず動いているタービンを全部止める。そして、一からストレステストをやりなおして安全をチェックする。そうしないと、隠れた部分に潜んでいる致命的なエラーは、永遠に発見できない。
とはいえ、つまずいた時にきちんと立ち止まることは、そんなに簡単なことではない。
というのも、走るという運動は、「走り続ける」という過程の一部分であり、その強烈な慣性力は「止まったら終わりだ」という、これまた強烈な思想を内に含んでいるからだ。
止まったら倒れる、と、そう思ってわれわれは走っている。
というよりも、そう思い込むことで、かろうじて走る意欲を持ちこたえているのかもしれない。
であるから、風邪薬のCMでは、色っぽい若妻が
「仕事、休めないんでしょ?」
と、風邪薬を差し出すシナリオが採用される。
もう何十年も前から同じだ。うちの国の産業社会は、本当にカラダを心配してくれているはずの人間に「クスリを飲んで頑張って出勤してね」と言わせる設定で動いている。
もっとも、この若妻のセリフを、単純に夫の尻を叩く無慈悲な督励と受けとめるのは早計だ。
実際の話、企業の側から見ても、風邪をひいた社員が無理して出社して来る事態は、必ずしもありがたいわけではない。生産性から言っても、感染リスクの面から見ても、おそらくマイナスだ。
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