「フクシマの視点」

難しい山林除染、依然高い線量

除染モデル実証事業で明らかに

  • 藍原 寛子

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2012年2月15日(水)

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 2月9日午後。震災後、爆発した福島第一原発から約1.5キロメートルの地点にある福島県大熊町夫沢地区の民家の前に、40人ほどの集団が突如、出現した。白い防護服に、顔には全面マスクを装着、手袋を着けた一団は、それぞれがカメラやノート、ペンなどを手にしている。この日、日本原子力研究開発機構(略称:JAEA)が大手建設業者に委託した「除染モデル実証事業」の現場が報道関係者に公開された。

 民家の向こうに広がる水田や山林では、音を立てて重機クレーンが動き、その周囲では同じように、防護服と全面マスク姿の人々が行き来している。様々なガイガーカウンターのアラーム音が聞こえてくる。バスの外では毎時30マイクロシーベルト以下には下がらなくなった。文字通り、高線量地帯だ。

 白い集団の脇で、交通整理をする人、汚染したアスファルトの道路を機材を使って高圧洗浄で洗い落す人が黙々と作業を進めている。全面マスクのため、他の人の声はあまり聞こえない。除染で発生した汚染土や落ち葉などが詰められた黒いフレキシブルコンテナバッグ(フレコンバッグ)を、小型の重機が運んでいる。

 「ここでは除去物をフレコンバッグの中に入れて仮置きしているが、フレコンバッグの中には線量の高いものもある。気分が良くない人は、近付かないように」。小型スピーカーを持った防護服姿のJAEA担当者が報道関係者に向けた注意の声が響く。

終盤を迎えた「除染モデル実証事業」

 ここ大熊町で行われている作業は、国・内閣府がJAEAに委託した「警戒区域、計画的避難区域等における除染モデル実証事業」の一環。JAEAによると、警戒区域や計画的避難区域等で国が行う除染作業において、効果的な除染技術や費用対効果の確認、除染水の処理方法、取り除いた土などの安全な仮置き方法、作業員の被曝管理など、今後、広範な除染作業を行うにあたって必要となる情報を得るのが狙い。国が今後予定している除染事業と、現在JAEAが行っている事業は直結せず、「あくまでも研究、パイロット事業」(JAEA)という。

 実施に当たって国から委託を受けたJAEAは、事業企画を募って実施業者を選定。南相馬市、川俣町、浪江町、飯舘村は大成建設JV(共同企業体)、田村市、双葉町、富岡町、葛尾村は鹿島JV、広野町、大熊町、楢葉町、川内村は大林JVがそれぞれ受注した。JAEAによると、大成JV、大林JVが各32億、鹿島JVが17億で契約。今後、内容の精査、エビデンスによる検討を経て年度内清算となる。JAEAは、この「除染モデル実証事業」と「除染技術実証試験事業」を合わせて、総額で約100億円の事業を国から受託した。

 事業費は各JVの持ち出しになっており、「はじめから、大手ゼネコンでなければ受注できない事業になっている」と指摘する地元事業者もいる。

 対象地区は11自治体の約20地点、その合計面積は約2平方キロメートル(209ヘクタール)。国の本格実施に向けた基礎データを作ることが目的だ。だが今後、広い地域で除染を実施することになれば、より高額な予算が必要になることは想像に難くない。

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