「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

例のアンケート調査とハシズムの“善意”

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2012年2月17日(金)

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 今週は、大阪市が市の職員に対して実施したアンケート調査について考えてみる。
 調査票の文面が2月9日付で市役所の内部に配布されると、その全文は、ほどなく、複写画像をPDFに加工した形のファイルとしてネット上に流出した。

 この種の「内部文書」が、いともあっさりと外部に流出してしまっているところにも、大阪市役所がかかえている問題は、ある程度露呈している。

「こんな情報管理の基本中の基本が守られていない職場だからこそ、強力な管理体制が必要なのだ」
 と、アンケート調査を推進している側の人々は、むしろ意を強くしたことだろう。
 ここでは、情報管理の問題については、これ以上踏み込まない。
 アンケートは実施された。そしてその内容は既に外部に漏れている。当原稿は、この前提から出発する。

 アンケートの特別さは、質問項目の仔細を検討するまでもなく、橋下徹市長の署名が書きこまれたその前文を読めば明らかだ。以下、引用する。

《アンケート調査について
 市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動について、次々に問題が露呈しています。
 この際、××××・特別顧問のもとで、徹底した調査・実態解明を行っていただき、膿を出し切りたい考えています。
 その一環で、××特別顧問のもとで、添付のアンケート調査を実施いただきます。
 以下を認識の上、対応よろしくお願いします

1) このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。
 正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。

  ――中略――

 また、仮に、このアンケートへの回答で、自らの違法行為について、真実を報告した場合、懲戒処分の標準的な量定を軽減し、特に悪質な事案を除いて免職とすることはありません。
 以上を踏まえ、真実を正確に回答してください。

 以上

大阪市長 橋下徹 》

 反響は、またたく間にネット上を駆け巡った。
 「あきらかな思想調査だ」と言う人々がいる。
 「不当労働行為」だと断言する専門家もいる。
 「憲法違反」を指摘する向きもある。

 私個人は、このアンケートが法律的に有効であるのかどうか判断できずにいる。
 今後、訴訟が起こるかもしれない。別の場面で違法性が問われることになるかもしれない。どっちにしても、答えが出るのはまだしばらく先の話になるだろう。

 この原稿では、法的な有効性とは別の視点から、このアンケートが浮かび上がらせた問題を読み解いてみたいと思っている。

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著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

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