• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

笑いを巻き起こす下半身のこっけいな営み

笑う[7]

2012年2月23日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回から読む)

ラブレーの笑い

 「一六世紀は笑いの歴史の頂上であり、その頂上のピークがラブレーの小説である」[1]。ラブレーは中世的なカーニバルの笑いをその極限にまで高めて表現した。バフチンはその特徴を、第一に民衆の祝祭の表現、第二に祝祭のうちでも人々が集まって食事をする饗宴の表現、第三に饗宴のうちでも、食べる営みをする肉体の特異な表現、第四に肉体のうちでも腹部とその下の下半身の部分の強調のうちにみいだしている。その主なものを順に調べてみよう。

王の奪冠

 第一のカーニバル的な要素が顕著なのは、『第四書』でパンタグリュエルの一行の代理委任島での祝祭的な殴打である。ここには法院族という一族がいる。この国の修道士や司祭などがある貴族を痛めつけようとすると、この法院族が派遣される。彼は貴族に召喚状を渡しては、「恥も外聞もなく罵倒し、愚弄する」[2]

 するとかんかんに怒った貴族は、法院族の「頭を棍棒で殴りつける、剣で切りつける、ひかがみをいやというほど叩きのめす」[3]しかなくなる。すると法院族は、依頼者からたんまりと報酬をもらい、貴族からは多額の賠償金をせしめるので、「お金がころげこみ、それから四か月間は、お大尽暮らし」[4]ということになる。

 パンタグリュエルの一行はこの風習を知り、さらに婚礼のお祝いのときには、「おたがいに冗談めかして軽くこぶしで殴りあう」[5]風習があり、これには誰も異議を唱えられないことなっていたことを利用して、婚礼のお祝いにかこつけて、法院族を殴りつけることを土地の殿様から依頼される。「遠慮会釈なしに、ぶっ叩いてくれ、お願いだぞ、ごつごつ、ぴちゃぴちゃ、ぽかぽかとやってくれ」[6]と頼まれたのである。

 そこで一行は、法院族が行列を通ると一斉に殴りかかった。「肋骨は八本へし折れ、胸骨はぐじゃぐじゃに潰され、肩胛骨は四つに割られ、下顎は三つに裂かれてばくばくになり、傷だけになって失神してしまいましたが、何もかも、ふざけ半分で、わあわあ笑いながら行われたのですよ」[7]

 殴られた法院族は大けがをしてしまうが、誰も咎めることはできない。バフチンが指摘するように、この身分が高いはずの法院族の殴打は、カーニバルの王の奪冠のイメージを再現しているのである。この儀式では王様は道化になる。王は「全民衆によって選ばれ、それから彼の王位の期間が終わりと、その全民衆によって嘲笑され、罵られ、打たれる」[8]のである。

コメント0

「中山元の哲学カフェ」のバックナンバー

一覧

「笑いを巻き起こす下半身のこっけいな営み」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長