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「社会」を「ソーシャル」に変えたスマホという機械

2012年3月16日(金)

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 スマートフォンを買おうと思っている。

 これまでは、「どうせひきこもりなんだから」という理由で手を出していなかった。
 実際、あれは、電話というよりは、移動仕様の簡易PCに近い。それゆえ、自宅にこもっていることの多い私の暮らしぶりからして不要なブツだった。

 逆に考えれば、スマホは、ソーシャル(社会的)なツールだということになる。
 従来型の携帯電話(以下「ガラケー」と略称します)は、通話なりメールなりという個別の関係を仲介してはいても、その持ち主を「社会」に接続する機能は持っていない。だから、コミュニケーションツールではあっても、ソーシャルなネットワークとは無縁だ。

 が、スマホは、あれは、電話ではない。通信端末だ。その意味で、スマホの画面に指先を這わせている人間は、通話先の人間というよりは、もっと漠然とした「ネット社会」につながっている。ということはつまり、スマホというあの小さな窓は、外出中ないしは移動中の人間が、社会的な意味を持つ情報やアプリと接しながら動いていることを意味しているわけで、結局、スマホを覗いている人間は、外界にいながら、もうひとつ別の層の外界に属しているのである。

 そんなわけで、スマホの先にある「ソーシャル」は、リアルな社会の中では、「非社会性」として顕現する。
 いや、難しい言い方をしてすまない。
 平たく言えば、スマホを持ち出すことが社交上のマナー違反になる場面があるぞ、ということだ。

「席に着くなり《表参道でランチなう》とかやってたりするヤツらってアレ、なんとかならないのか?」

 この発言は、さる広告会社の社長をやっている人間(だが)が言っていたことだ。
 なるほど、彼のような立場の男でも、目前でスマホを持ち出されることがあるらしい。

「で、料理が届くと写真撮ってたりするわけだよ」
 ふむ。

「いや、ひるめしなうでも写真でも好きにやれば良いんだけどさ。そういうことしたいんだったら、自腹でメシ食えってことにならないか?」

 うん。わかるぞ。対面している人間との会話よりも、画面の向こう側のバーチャルなつながりを重視しているみたいな人間に昼飯をおごる理由はない。

 とはいえ、彼は、そういう若いヤツに向かってあえて苦言を呈することはしないのだそうだ。説教をしたところで、「わかってないオッサン」と思われるだけだし、そもそも、目上の人間の前で会食中にスマホをいじるみたいなことをやってしまえるような神経の持ち主は、その時点で、教え諭す価値のない人間だからだ。
 なるほど。いちいちもっともだ。

 本来なら、そいつのツイッターのアカウントにメンションを飛ばして

「失礼なう」

 と書き込むのが一番効果的な対処法だと思うのだが、私もこのアドバイスは控えた。私のソーシャル観が、実際のところ現実の社会で有効なのかどうか、自信が持てなかったからだ。

 かように、われわれのソーシャルは、バラけてきている。というよりも、ソーシャルメディアは、「社会」というこれまでは曲りなりにも単一に見えていたわれわれをとりまく架空の枠組みを、多様で恣意的で出所の曖昧な「ソーシャル」という、なにやら流動的な液体様のものに変質させているのである。

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「「社会」を「ソーシャル」に変えたスマホという機械」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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