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AKB48でなく野田さんとビートルズについて書くワケ

2012年3月30日(金)

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 今回は、AKB48のメンバーだった前田敦子さんの「卒業」について書くつもりだったのだが、断念した。

 知識を持っていない分野に口を出すと、恥をかくことになると思ったからだ
「それなら毎回のことじゃないか」
 早速、コメント欄へのツッコミがアタマに浮かぶ。不幸な事態だ。

 思うに、この世界には、知識のない人間が安易に口を挟むべきでない分野と、逆に、専門家ではないからこそあえて言及しなければならない分野がある。

 AKB48の芸能史における位置づけや、メンバーの消長について何か意味のある言葉を言うためには、知識だけではなくて、彼女たちの活動に対する一定の理解と愛情を持っていないといけない。ろくに経過観察もしていない人間が思いつきでものを言うと、薄っぺらな批評ができあがってくる。で、その表面的な言葉は、書き手の底の浅さを露呈するのみならず、ファンの心を傷つける。そういう愚かな展開は避けるべきだ。

 政治経済や原発といった「大ネタ」を相手にする場合は、ちょっとスタンダードが違う。書き手が知識を持っていた方が良いのはもちろんだが、この種のジャーナリスティックなトピックについては、素人が普通に感じる疑問をぶつけておくことにも、それはそれで別の意義がある。というよりも、専門家集団が一般人を排除する形で勝手に進めている問題には、誰かが、部外者の立場から説明を求めなければならない。なぜなら、ビッグイシューについては当事者の側に説明責任があるからで、ということはつまり、その説明責任の対象であるわたくしども一般人の側にも「理解義務」(←「義務」ではないにしても)に似たものが生じているはずだからだ。

 コラムニストは、ニュースのトピックについて、専門的な解説を提供する人間ではない。
 が、その代わりに、読者になりかわって疑問を提示する役割を担っている。疑問は愚問であってもかまわない。いや、むしろ、愚直な質問の方が価値が高いのかもしれない。

「プロ野球のコミッショナーって誰に雇われてるんだ?」
「総理大臣みたいな立場の人間がやたらと命をかけるのは、ちょっと迷惑だと思うのだが」
 とにかく、最終的に解答を提示することができないのだとしても、せめて疑問を分かち合うことが、問題の外側に立っている人間の為すべき仕事だ。私はそう考えている。

 話をもとにもどす。
 私が前田敦子の話題を回避した直接のきっかけは、野田首相がビートルズに言及する姿を見て反省したからだ。

「ああ、こういう恥をさらしてはいけないな」
 私はそう思って、あっちゃんの話題をあきらめた。

 恥辱は感染する。野田さんが提供した恥ずかしさは、またたく間に私のタイムラインを席巻した。

「ああ、国際社会のみなさんごめんなさい」
「うちのボスがビートルズを泥まみれにした件について、劣等国民の一人として謝罪いたします」
「日本に駐在する外国企業のみなさんや、外信部の記者さんはぜひ翻訳を自粛してください」
「ああ、野田を知らなかった昨日が、いまはこんなに恋しい」

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「AKB48でなく野田さんとビートルズについて書くワケ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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