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「どうして日本のヒトは電車の中ではたらくのか?」

2012年4月27日(金)

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 「ノマド・ワーキング」という言葉をはじめて聞いたのは、2年ほど前のことだったと思うのだが、それがここへ来て急速に定着しているようで、最近は、あらゆる場所でこの言葉を目にするようになった。

 意味は、英語の「遊牧民」からの連想で、「オフィスに縛られない働き方」を指している。で、そういう働き方をする人たちを「ノマド・ワーカー」と呼ぶ。

 オフィス以外の場所で働くこと自体は、今に始まったことではない。
 ずっと昔から、われわれは仕事を持ち帰ったり持ち出したりしながら、自宅で、喫茶店で、新幹線の中で、様々な作業に従事してきた。

「どうして日本のヒトは電車の中ではたらくのか?」

 と、フィリピンからやってきた女性に尋ねられたことがある。

「何かの罰なのか?」

 私はうまく答えることができなかった。
 もしかしたら、本当に罰なのかもしれない。

 パチンコ店の客を工場労働者と勘違いした外国人観光客がいるという話も聞いた。たしかに、あの巨大な騒音の中で機械の前に座ってレバーを操作している姿は、「モダンタイムズ」を一回り凶悪にした強制労働の姿に見えないこともない。われわれは、自分で考えているよりずっとかわいそうな人なのかもしれない。

 ノマドと呼ばれる働き方が注目されるようになったのは、この数年の間に、オフィスの外で働くための条件が整備されてきたということがある。

 ノートパソコンやスマートフォンのようなガジェットが小型&高性能化した。無線LANが使える環境が整備されて、手持ちのデジタル機器から気軽にインターネットに接続できるようになった。Dropbox、Evernoteのような、クラウド前提で動くソフトウェアが普及した。たしかに、たとえば5年前に比べれば、移動中や出張先での作業は格段にはかどるようになった。その意味では、オフィスワーカーといえども、職場にこだわる必要はなくなっているのかもしれない。

「というよりも、オフィスなんかより電車の方が全然仕事がはかどるわけだが」

 どうしてだ?

「だって無駄な電話がかかってこないし、誰も話しかけてこないだろ?」

 つまりオフィスにいると仕事に邪魔が入るということなのか?

「15分以上放置してくれることはまず無いよ。一日中インタラプトが入りまくりだよ。仕事してないヤツが無駄話してくるし、おっさんがパソコンの使い方質問してくるし、上司が無意味な指示持ってきたりするわけだから」

 ううむ。
 自分の職場にいると仕事がはかどらない、と感じているビジネスマンは思いのほか多い。
 彼らは、「ほっといてくれよ」と思っている。
 そういう意味で、「一人になれる場所」で仕事ができる環境が整いつつあることは、福音であるのかもしれない。

 とはいえ、ノマド・ワーキングは、オフィスワーカーの働き方の変化を指すだけの言葉ではない。それだけだと、単に「サービス残業の外部化」だとか、「プライベート空間の職場化」みたいな話になりかねない。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「「どうして日本のヒトは電車の中ではたらくのか?」」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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