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猫っかぶりの「Win-Win」が見落としがちなこと

2012年5月11日(金)

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 「猫さん五輪消滅」

 という記事の見出しを見て、ただちに状況を把握できた人は、かなりの事情通だと思う。
 私は意味がわからなかった。
 普通の人間は、最初の「猫さん」でつまづく。

「ねこ?」
「ぬこか?」
「なんで猫に敬称がつくんだ?」

 と、そう思った瞬間に、その先に考えが進まなくなる。

 より軽率な人々は「猫さん五輪」という不可思議な言葉に乗っかったカタチでイマジネーションをふくらませてしまう。

「つまり、にゃんこのオリンピックが企画されていたということなの?」
「あら、かわいいかも」
「ニャンリンピック賛成」
「石原閣下は全力で誘致すべき」

 ちなみに解説すれば、当該の記事はネコリンピック招致合戦の帰趨について報告したものではない。猫ひろしという芸名で活躍しているタレントの五輪出場への可能性が消滅した件について述べている。以下引用する。原文はこちら

《カンボジア国籍を取得しロンドン五輪男子マラソン代表に選ばれたタレントの猫ひろしさんについて、国際陸上競技連盟は「特例」での五輪出場を認めなかった。背景には婚姻など特別な事情を除いた国籍変更について、国際陸連が以前から厳しい姿勢を貫いてきた事情がある。》

 見出しの曖昧さとは裏腹に、記事は明快だ。記者は、「特別枠」での五輪参加について以下のような感想を述べることで文章をしめくくっている(以下の引用はこちら)。

《国際陸連は、全種目を通じて五輪参加標準記録を突破した選手がいない場合、1カ国・地域について男女各1人の五輪出場を認める特別枠を設けている。男子マラソンで五輪参加標準記録B(2時間18分0秒)を突破していない猫さんが一度はカンボジア代表に選ばれたのも、この特別枠の対象としたからだ。

 だが、特別枠は国際陸連が憲章でうたっている「陸上競技の世界的な普及発展」を目的としたもの。他国の選手が国籍を変更して、一つの特別枠を活用することが普及発展につながるのか。こうした疑問に応える理由を持ち得なかった面は否めない。》(毎日新聞)

 よくまとまった記事だと思う。私が付け加えるべき言葉はひとつもない。

 デスクが見出しに「猫さん」を持ってきたのは、おそらく、その方が面白いと思ったからだ。遊び心といえば遊び心。アイキャッチを意識したという意味では、プロ根性だったのかもしれない。

 別の見方もできる。
 もしかして、デスクは、印象として不真面目であることがわかっているからこそ、あえて「猫さん」の見出しを採用したのかもしれない。

「冗談じゃない。オレは意地でもマトモな見出しはつけないぞ」

 と、彼の記者魂が、このたわけたニュースに正攻法の見出しを付けることを拒否したわけだ。
 なるほど。

 通常のスポーツ記事の基準からすれば、「猫ひろし」のところには、日本名カンボジア名のいずれであれ、本人の公式な名称である本名を書かなければならない。
 事実、共同通信をはじめとするいくつかのソースは、『タレントの猫ひろし(本名滝崎邦明)さん(34)』と但し書きを付けた書き方をしている。

コメント45件コメント/レビュー

借りて来た猫w(2012/05/16)

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「猫っかぶりの「Win-Win」が見落としがちなこと」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

借りて来た猫w(2012/05/16)

だから「三方良し」なんでしょうが。短期的にはwin-winでもいいんでしょうが、事業継続のためには「三方良し」は義務です。「三方良し」を満たしている事業を継続していると富が社会に蓄積されますから、逆に事業の存在意義は「富を社会に蓄積すること」と抽象化できるでしょう。win-loseが基本とか言ってる阿呆もいるようですが、そんな奴は総スカン食って消えてくのがオチですよ?というかそれ、どんな悪徳商法ですか?(2012/05/16)

Win-Winというビジネスのモデルによって取りこぼされているもの、持って回った言い方をすれば道徳心、公益、五輪の話なら報道の中立性、まあどれも猫をかぶった言い方ですが、色々こぼれてますね。こぼれたものを拾おうとした結果、CSRという地歌が聞こえてきたりも。まあ食卓の食べこぼしは猫が食べるものなのだから、生温かく見守るのがよろしいのかもしれません。(2012/05/15)

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