• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「いないいないばあ」の笑い

笑う[18]――同一と差異のシステム

2012年5月17日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回から読む)

笑いのメカニズム

 ここで笑いの第二の理論として、同一と差異のシステムによる笑いのメカニズム分析を考えてみよう。人はどんなときに笑いだすのだろうか。最初に、人に向けた子供の笑い笑いの零度として考察した。これは人間としての基本的な笑いであり、他者にたいして自分が無害であることを示し、他者を受け入れようとする姿勢を示すもので、コミュニケーションの基本となるものだった。

 しかし子供の笑いには、笑いのメカニズムを示すものとして、もっと興味深い笑いがある。それは「いないいないばあ」の笑いである。この笑いを子供はとても好むので、ぼくは電車の中で知らない子供とこの遊びを戯れたことがあるほどだ。今まで目の前に人の顔があったのに、何かの後ろに隠れて、それがまた出てくる。それがどうしてあれほど楽しい笑いを誘うのだろうか。

「いないいないばあ」の笑いの条件

 「いないいないばあ」の笑いが成立するには、三つの基本条件がある。第一は、同一のものが隠れ、また現れることである。二度目に違う顔が出てきたのでは、子供は笑うことができない。馴染みの顔が出てくるから笑うのである。それにこの同じものがそのままそこにあったのでは子供は笑わない。隠れて、また現れることが必要である。

 ただし出てきた顔は前と同じものであるが、まったく同じものではない。表情だって違うだろうし、子供は時間的な経過とともに違いをみいだすだろう。一度目の顔と二度目の顔はもう違う。二度目の顔はすでに一度いなくなった顔であるという過去をそなえている。そしてこの過去の歴史が長くなるほど、子供は楽しそうに笑う。反復する回数が増えれば増えるほど、子供の笑いは繰り返され、笑い声は高くなり、少しヒステリックになってくるだろう。

 第三の条件は枠組みである。この枠組みにも同一性と差異のルールが適用される。笑いを生むためには、枠組みの同一性が維持されている必要がある場合と、枠組みの違いが笑いを引き起こす場合がある。「いないいないばあ」の場合には、枠組みの同一性が必要である。これはゲームであり、遊びである。ぼくと子供は「いないいないばあ」の遊びをするという暗黙の契約を結んでいる。

 ぼくが途中でいなくなってしまったならば、遊びはおしまいである。子供は笑わない。ぼくが途中で顔を変えてしかめつらになったなら、子供は笑わない。おもちゃを見せたら、子供はやはり笑うのをやめるだろう。ゲームの規則が違うからである。そして子供の笑いがヒステリックになった段階でやめておかないと、子供は泣きだしてしまうだろう。そして遊びという枠組みが崩壊して、もっと違う枠組みが生まれ、ぼくは子供を苛めたと非難されるだろう。

コメント0

「中山元の哲学カフェ」のバックナンバー

一覧

「「いないいないばあ」の笑い」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トップ自らが矢面に立つことで、問題は次第に収束していきました。

佐々木 眞一 日本科学技術連盟理事長、トヨタ自動車顧問・技監