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Vol.63 他人の鑑賞文にダマされてはいけない

作者のバイオグラフィを調べてから、作品を読むべきなのか?

  • 千野 帽子,堀本 裕樹

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2012年5月25日(金)

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 爽やかな天気の日、「五月(さつき)晴れだー」と言いたくなりますが、五月晴れとはもともと、五月雨(さみだれ)=梅雨時季の雨の合間の晴れのことで、5月の晴れのことではなかったそうです。俳句の世界では、まだ出番が早い言葉なのです。

 今週のかわずくんは、マッハ575。一見物騒?なタイトルですが、読んでみれば納得です!

マッハ28. 堀本裕樹にダマされるな!

 日直のボウシータです。今回は、俳句とどう出会うか、というお話。

 みなさん、堀本裕樹の俳句鑑賞本『十七音の海 俳句という詩にめぐり逢う』(カンゼン)、読んでますか? 私はもちろん読みました。

 いい本だなー。なにがいい本だと言って、高浜虚子だの寺山修司だのといった近代俳句の大家たちの句と同列に千野帽子の句を取りあげてるのがいい! こんな本はない! 今後もない! 空前にして絶後。

 という俺得ポイント以外にも、堀やんの上品であたたかい文体で書かれた正統派の鑑賞本として、楽しく読めて役にも立つ。

 鑑賞文という不思議な分野は、古今和歌集の評釈に遡るとも考えられる。これ自体が長い歴史を持つ文学ジャンルである。

 鑑賞文は俳句や短歌の魅力を教えてくれる案内人と見なされている。朝日新聞朝刊1面でかれこれ30年近く続いた大岡信『折々のうた』は岩波新書にして19巻の大作であり、山本健吉の『現代俳句』『句歌歳時記』と並ぶ現代短詩型鑑賞文の金字塔といったおもむきがある。

 鑑賞文と短詩型の関係は切っても切れない。私たちは俳句を読んだ瞬間に頭のなかに鑑賞文のタネのようなものができてしまう。句会はその鑑賞文を複数の人たちがナマで出し合うブレーンストーミングだ。公開句会「東京マッハ」になると、鑑賞文を大喜利状に披露しあう形式の演芸である。

 つまり俳句と出会ったリアクションをそのまま分析的に敷衍したものが鑑賞文というわけ。鑑賞文にせよふだんの句評にせよ、評者にはセンスと経験と教養が問われる。

 拙句を取りあげてもらっておいて、なんで今回は「堀本裕樹にダマされるな!」なんて忘恩なタイトルをつけたのか。

 ひとつには、鑑賞文を「唯一の正解」だと決めつけないでほしい、ということ。

 鑑賞文には厳然たる形式がある。最初に俳句なり短歌なりの短詩型作品を、作者名ともども掲げる。この部分だけ活字が大きかったりすることも多い。つづいて、しばしば少しスペースを空けて、評者が150~500字程度の分析的なコメントをつける。

 そのとき評者のコメントが、それを読む前に自分が句にたいして感じたことと矛盾しなかったら「よかった~、ハズレじゃなかった」と安心する、というような答え合わせの読みかたはしないほうがいい。

このことはほかでもない堀やん自身が「はじめに」で

私の解釈や説明はあくまで目安にしていただき、この本をお読みくださる方の想像力を一番大事にしてもらえたらと思います。

と書いているとおりである。

 もちろん鑑賞文を書いて商業出版するような人は、そこらの素人に比べればはるかにちゃんと句を読めるし、文章も書けるはずだ。世のなかにはイケてる読みもあればイケてない読みもある。堀本裕樹に負けない鑑賞をやってみせるのは、そうそう簡単なことではない。

 それでも、ひょっとしたら堀やんや大岡信や山本健吉と違った読みをしてしまって、でも自分の読みのほうがイケてることだって、理論的にはありうるのだ。

 でも「堀本裕樹にダマされるな!」という題で私が言いたいことはこれだけじゃない。

十七音の海 俳句という詩にめぐり逢う』、堀本裕樹 著、カンゼン、1365円(税込)
折々のうた』、大岡信 著、岩波新書、735円(税込)
定本 現代俳句』、山本健吉 著、角川選書、2520円(税込)

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