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カントが重視した笑いの健康的効果

笑う[20]――放出としての笑い

2012年5月31日(木)

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笑いの生理学

 これまで優越感の表明としての笑い同一性と差異の笑い覚醒と矯正の機能としての笑いの理論を考察してきた。次に考えたいのは、エネルギーの放出としての笑いの理論である。人間の心的な容器のうちにある精神的なエネルギーが溜め込まれ、やがて本人にも苦しくなると、それが放出されることによって生まれる喜びが、笑いとしてこぼれだすと考えるのである。

 これは笑いを心理的なものと生理的なものの複合したものと考えようとすることだ。これまでの三つの笑いの理論は、笑いを主として心理的および精神的な立場から考えてきた。しかし笑いはつねに身体の表現である。顔に笑みが浮かび、破顔一笑し、ときには腹を抱えてまで笑いころげる。笑いは自己と他者にたいする優れて表出的で身体的な表現なのだ。

スペンサーの論文

 この笑いの身体性を重視した理論として、哲学者のハーバート・スペンサーの「笑いの生理学」という有名な論文がある。タイトルからも分かるように、笑いのメカニズムを人間の身体という生理学的な側面から考察したものである。スペンサーは笑いが優越感の表現であるという理論にたいして、わたしたちは誰の威厳にもかかわることのない冗談を聞いて笑うことがあるという簡明な事実によって反論しながら、「私たちが大いに喜んでいるとき、または予想もしなかった考えの対比に感銘を受けた時、なぜ顔や胸、腹部の特定の筋肉が収縮するのだろうか。このような問いに対して答えを出すことができるのは、生理学によってのみ可能である」[1]と答えるのである。

 スペンサーは、神経系が緊張した状態におかれると、その興奮を他の回路に伝達して放出しようとするのであり、そのことで笑いというものが生まれると考えるのだ。スペンサーは「緊張した状態における神経系の中心部が、その緊張を解消するときには三つの回路が存在する」という。まず神経系はその興奮を、「身体器官と直接に結合しない他の神経中心部に伝える」。これによって感情や思考が生みだされる。第二の回路は運動神経であり、これによって筋肉が収縮を起こす。そして第三の回路は、内臓を支配する神経であり、これが一つまたは複数の臓器を刺激するのである。

 身体はこの神経系の緊張を解放しようと努力する。解放されない緊張は、さらに強まるばかりで、苦しくなるからである。「感情を表に出すことを抑制すればその感情はさらに激しくなる」のである。そして緊張を解放するための唯一の方法は、それを身体で表現することである。「笑いは一種の筋肉運動の表れであり、ある強さに達した感情の流れがその一部を習慣的に身体運動という形で解放する」ものだからだ。

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「カントが重視した笑いの健康的効果」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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