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巧みな機知を語れる人と語れない人との違い

笑う[21]――放出としての笑い

2012年6月7日(木)

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言い間違いと機知

 前回は笑いを身体的な緊張の解放という観点から考察する理論を調べてきた。この理論をさらに精緻に、複雑に構築して、無意識との結びつきを発見したのがフロイトの笑いの理論である。

 フロイトの精神分析の理論は、無意識の存在を三つの証拠によって示すものだった。日常生活における微細な間違いと忘却、夢の存在、そして神経症を始めとする心的な病の存在である。どれも人間の意識の及ばないところで働いている無意識的なメカニズムの存在を示し、その解明を求めるものであった。そしてフロイトは、笑いにおいても無意識が重要な役割をはたしていることを明らかにするのである。

 フロイトの笑いの理論は、主として第一の日常生活における言い間違いの研究から派生したものである。フロイトは言い間違いの多くは、その背後に無意識的な要素が潜んでいることを指摘した。あるときオーストリアの下院議会の議長が議会の開会を宣言しようとして、「定足数の議員の出席を確認しましたので、ここで議会の閉会を宣言します」[1]と発言して、議員たちから大笑いされたことがある。この議長は、「なんの期待ももてないこの会議をすぐに閉会できればと期待していたのである」[2]。何となく気のあわない人と出会って、「こんにちは」の代わりに「さようなら」と言ってしまう人もいるだろう。

 この言葉はうっかりして語られたので哄笑を招いたのだが、これを意図的にやると、そこに機知の笑いが生まれる。フロイトの例では、パリのあるサロンにJ・J・ルソーという赤毛の男が紹介されたが、この男のふるまいがきわめてぎこちなかったので、サロンのマダムはその紹介者に、「あなたが紹介してくださったお若い方は、ルー(赤毛)・ソー(粗忽者)かもしれませんけど、ルソーではありませんわ」[3]と言ったという。マダムは機知の笑いのうちに、相手に自分の気持ちを伝えながら、相手をできるだけ傷つけないように配慮したのである。

機知のメカニズム

 フロイト多数の実例をあげながら、機知の笑いが生まれるメカニズムを考察する。その際にフロイトは、「笑いは意識が無意識的に大きな事柄から小さな事柄に向かうときに生じる。それは私たちが不調和を感じる状況が起きたときに生じるものなのである」[4]というスペンサーの定義を敷衍して、「それまである心的な通路への給付に使われていた心的なエネルギーの量が使用できなくなり、それが自由に排出できるようになるときに、笑いが生じる」[5]と言い換えるのである。

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「巧みな機知を語れる人と語れない人との違い」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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