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「自分自身を笑えるようになれ!」

笑う[22]――解放と和合の理論

2012年6月14日(木)

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笑う[21]――放出としての笑いから読む)

フロイト――笑いの共同体

 すでに考察してきたように、フロイトの笑いの理論においては、機知あるいはユーモアによって笑わせる人と、聞き手との違いが指摘されていた。笑わせる人は、精神的な仕事をして、自分のうちで心的なエネルギーが解放される回路を作りだすことで、機知を作りだす。

 そしてそれを聞いていた人は、その回路を自分のうちでも疑似的に作りだすことで、そのエネルギーの解放を跡づける。「聞き手において発生するのは、この謎めいたプロセスの複製であり、残響のようなものにすぎない」[1]のである。しかし聞き手は、そのときに精神の仕事をしない分だけ、その解放されたエネルギーが笑いとなって表現されるのだった。そして機知を作りだした人は、他者の笑いのうちにまぎれ込みながら、自分の笑いを解放することができる。

 ここでいわば笑いの共同体のようなものが生まれる。聞き手は機知とユーモアの人を高く評価する。「これはきわめて稀で貴重な才能」[2]だからである。しかし同時に、語り手は、聞き手の笑いのうちで自分の精神の仕事を評価され、笑いにとけこむことができる。この笑いは一人で笑うのではなく、他者の是認をもって初めて完結する。笑ってもらえない洒落くらい、つまらなく空しいものはないだろう。

スピノザの笑い――身体と他者

 笑いにはこのような他者との関係というものが含まれる。そのことを理論的に展開したのがスピノザである。スピノザの基本的な概念は、すべての生物に含まれるとされる自己保存の本能コナートスである。すべての生物は自己を保存させるものを善とみなし、自己の保存にさからうものを悪とみなす。「おのおのの者は自己の及ぶかぎり自己の存在に固執するように努める」[3]のである。

 このコナートスには二つの重要な側面がある。一つはこれはつねに身体という存在に伴うものであるということである。存在するのは身体があるからである。「精神の本質を構成する最初のものは、現実に存在する身体の観念であるから、われわれの精神の最初にして最も重要なものは、われわれの身体の存在を肯定する努力である」[4]。そしてこの精神と身体の能力を増大し、促進するものを人間は愛する。「愛とは外部の原因の観念を伴った喜び」[5]である。この喜びの身体的な表現こそが笑いである。

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「「自分自身を笑えるようになれ!」」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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