「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

ハードディスクに眠る違法データと遺書

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2012年6月15日(金)

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 「違法ダウンロード刑事罰化(罰則化)問題」というタグの付け方が、もしかしたら、すでに失敗だったのかもしれない。このネーミングの行く先には

「違法なら罰則があって当然じゃないか」

 という感じの早呑み込みが待ち構えているからだ。

 たしかに、普通の日本人の日常的な言語感覚からすれば、違法な行為に罰則が科されるのは極めて自然ななりゆきに思える。
 それどころか

「違法無罰とか、むしろそっちの方がありえないんじゃないか?」

 ぐらいな先走りさえ考えられる。

「つまり、津田っちは違法堂々みたいな世界を望んでるわけだな?」
「というよりも、イリーガル天国で脱法フリーダムなやりたい放題のインターネット社会を構築することが、ああいう連中の望みなわけで、結局のところ、金髪津田野郎一派は、既存の社会的枠組みを破壊したい分子なわけですよ」

 と、まあ、ここまで決めつける向きは少数派だろうが、それでも、最初に「違法」と言ってしまっている以上、罰則化に反対する言説は出発点からして分が悪い。

 今回は、「違法ダウンロード刑事罰化問題」について考えてみたい。
 遅すぎたかもしれないと思っている。もう少し早い時期に取り上げて、注意を喚起――いや、「注意を喚起する」という言い方は上からに聞こえて良くない。言い直そう。私は、もう少し早い時期に悲鳴をあげるべきだった。ちょっと後悔している。

 話を冒頭に戻す。「違法なら罰則があって当然だ」という見方は、実は、かなり大幅に間違っている。
 法の実態はそんなに単純なものではない。
 禁止が定められていながら、それを破った場合の罰則が定められていない法令は、実のところ、山ほどある。

 たとえば、建築関係の法令や政令、条例、規則の多くは、特段の罰則を定めていない。それでも、法は機能している。罰則が定められていなくても、規則に準じていなければ、許可が降りなかったり、検査を通らなかったりして、事実上建物を建てることができないからだ。建ててしまった場合は、施主および建築主が民事上の損害賠償責任を負うことになる。ということはつまり、罰則は別として、法令は働いている。こういう例は珍しくない。

 いま話題になっている「違法ダウンロード刑事罰化問題」は、これまで特段に罰則が定められていなかった「違法ダウンロード」に対して、新たに「刑事罰」を科そうという策動をめぐる問題だ。

 ということは、これは、大変に物騒な話なのである。

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