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ダーウィンはナマケモノを嫌わない

2012年6月22日(金)

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 「新型うつ」という活字をはじめて見かけたのは、昨年の夏、雅子皇太子妃のご病状について書かれた週刊誌の記事の中でのことだ。

 記事の主旨は、この数年来「気分障害」と説明されてきた雅子妃の症状が、実は、「新型うつ」なのではあるまいかという、一種の問題提起だった。

 では、その話題の「新型うつ」とはどういう病気なのかというと、これが、「病気ではない」という。

 ん?
 奇妙な話だ。
 病気でないのなら、はじめから話題にする方がおかしい。

 というよりも、診断名として定まってさえいない症状を、特定の個人に当てはめるのは、礼を失した話ではないか。相手が皇室の人間でなくても、これは、名誉にかかわる問題なんではないのか?

 そんなわけで、当該の記事を読んだ時、私が強い印象を抱いたのは、「新型うつ」という言葉それ自体ではなくて、むしろ

「新しい病名を捏造してまで雅子妃の病状を深読みする意図は奈辺にあるのか」

 という、記事の背景に当たる部分だった。いったい、この人たちは、雅子妃が「怠けている」ということをほのめかすことによって、どんな効果を狙っているのだろうか。

 このことは、いまもって私の中でくすぶっている。が、当件は今回の主題とは別の話なので、先に進むことにする。

 ともあれ、昨年の夏の段階では、私は、「新型うつ」という用語は、雅子妃へのあてこすりとして発明された架空の病名であるというふうに解釈していた。

 あてこすり、ほのめかし、おためごかし――確かな事実は何一つ書かれていないのに、明らかに気分が表現されている――皇室記事は、日本語という豊かな婉曲表現を持つ言語が到達したひとつの洗練の極みだ。わたくしどもの国語は、書き手が自らの心の卑しさを隠そうとする時に、最も華麗な表現力を発揮する。なんとも残念な傾向だ。
 
 「新型うつ」は、この記事が話題になったからなのかどうか、同じ雑誌の誌面で、何度か続報企画を産むことになった。キャンペーンと言っても良いかもしれない。とにかく、週刊文春は、「新型うつ」にご執心だった。

 ほどなく、ほかの雑誌が後追いをはじめた。特に中高年向けの総合雑誌は軒並みこの言葉を見出しに持ってきていた。

 で、ついには4月29日放送のNHKスペシャルが「職場を襲う“新型うつ”」というタイトルで50分間のドキュメンタリー番組を放送する。こうなると、一人前の流行語だ。もしかしたら、今年の新語・流行語大賞を獲るかもしれない。「ワイルドだぜぇ」とどっちが大賞に輝くか、楽しみだ。「再稼働」は選外。ノミネートさえされないはずだ。日常化した現実は、どんなに致命的であっても「流行」とはみなされない。

コメント71

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「ダーウィンはナマケモノを嫌わない」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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