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スキャンダルにもう「ふりむかないで」

2012年6月29日(金)

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 ザ・ピーナッツの伊藤エミさんが亡くなった。報道によれば、死亡したのは今月の15日で、葬儀はすでに近親者のみで執り行われたという。71歳だった。

 マスコミ各社は、訃報を受けて、さっそく前夫である沢田研二さん(以下敬称略)の自宅に駆けつけた。

 が、彼は取材に応じなかった。
 あたりまえだ。だいたい、コメントを求めに行く方がどうかしている。
 いまさら何を言えというのだ?

 結果として、スポーツ各紙は

「沢田研二、元妻の死に無言を貫く」

 ぐらいな記事で誌面を埋めたわけなのだが、これも、考えてみればどうかしている。
 沢田研二が記者の問いかけに言葉を返さなかったことの意味は、

「自分が回答を拒否した旨を記事にしてほしい」

 ということではない。

「何も書いてほしくない」

 という意味だ。
 とすれば、コメントが取れなった以上、記事はボツにすべきだった。それが、まっとうなジャーナリズムというものだ。

 ……というのは、実のところ、ジャーナリズムの現場を知らないオダジマが振り回している青臭い正論に過ぎない。妥当性があるのかどうかはわからない。

 おそらく、現場の答えは違っている。
 取材が不調でも、事実がゼロでも、紙面は存在している。白紙を印刷するわけにはいかない。であれば、記事は、結局は書かれなければならない。このコラムと同じことだ。

 デスクは、記事に需要があると考えている。
 というよりも、四半世紀前に別れた前夫の追悼コメントを読みたがる読者への強力な信頼が、新聞を発行させている当のものなのである。
 

 とはいえ、本当のところ、需要はあったのだろうか。
 私は、ノーコメント記事に需要があったのかどうか、強い疑問を抱いている。
 ふつうに冥福を祈って、業績を振り返ればそれで充分ではないか。

 今回は、スキャンダルについて考えてみたい。

 ご存知の通り、この半月ほどの間に、芸能、政治、スポーツの各分野で、立て続けに大きなスキャンダルが報じられた。これほど続けざまに著名人の醜聞が発覚することは、最近では珍しいことだ。

 ところが、スクープは、たいして世間の耳目を集めていない。
 どういうことなのだろうか。
 われわれは、スキャンダルに関心を抱かない国民に成長したのであろうか。
 あるいは、この10年ほどの間に、わたくしども日本人の中で、スキャンダルを処理する基準が変わってしまったのかもしれない。
 だとしたら、その変貌は、何によってもたらされたものなのであろうか。

 念のために、スキャンダルを振り返っておく。

(1) 国民的人気アイドルグループの主要メンバーとされている女性アイドルの一人が、デビュー間もない時期にファンの少年と交際していた事実が発覚した。
(2) 小沢一郎氏の妻が支持者に宛てて書いたとされる直筆の手紙が公開され、その中で、小沢氏の不倫、隠し子および、震災時の行動が暴露された。
(3) 巨人軍の原監督が選手時代の不倫をネタに恐喝され、1億円を支払っていたことが発覚した。

 まず、(1)についてだが、この問題は、当該アイドルを博多に「左遷」することで既に一件落着している。

コメント23

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「スキャンダルにもう「ふりむかないで」」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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