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レバ刺し最終試食会の夕べ

2012年7月6日(金)

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 6月のはじめ頃、ある食事会に誘われた。

 主旨は、「レバ刺しとのお別れ会」ということらしい。牛の生レバーが違法になる前に、最後の食べ納めをしようではないかという、なかなかおくゆかしい集まりだ。

 なるほど。
 が、私は、ちょうどスケジュール的にむずかしかったこともあって、参加を辞退した。

「レバ刺しはお好きじゃなかったですか?」
「えーと、まあ、あんまり食べない感じでしょうかね」

 本当のことを言えば、生のレバーは生まれてこの方食べたことがない。そう言うと、なんだかケンカを売っている感じになるので、曖昧に答えた次第だ。

 レバーは、生でなくても、基本的には食べない。牛であれ豚であれ、あるいは鶏でも馬でも、まず箸はつけない。というよりも、端的に述べるなら、レバーは大嫌いだ。

 絶対に食べられないということではない。でも、よほど追い詰められない限りは口をつけない。ということはつまり、当方としては、今回の生レバー最終試食会については、自分を追い詰めなければならない理由が見つからなかった以上、お断りするほかに選択肢がなかったのである。
 
 食べ物の話題は微妙だ。
 私の場合、正直な話をすると、たいていカドが立つ。

 だから、ふだんは、なるべくこの手の話には触れない。話題が出た時には、適当に調子を合わせて、自己主張は避けるようにしている。でないと、必ずや面倒くさい展開になるからだ。

 大勢で食事に行くのも、そんなわけで、本当は苦手だ。

「あれ? ミノは食べないんですか?」
「ええ、こういうのはあんまり」
「ホルモンも?」
「まあ、特にすすんで食べる感じじゃないです」
「ハチノスはどうです?」
「……食べたことないんで……」
「……つまりアレですか? 内臓系は何も食べないってことですか?」
「無理にと言うことなら食べられないこともないんですが……あの、今日のこの会は、無理をする会なんですか?」
「いや、誰もそんなことは言ってませんよ」
「無理に食べろとは言いません。でもほら、こんなおいしいもの食べないのはもったいないと思って」
「そうですよ。だって、内臓の無い牛はいないでしょ。肉だけで歩いてる牛なんて見たことありますか?」
「おまえそれ関係ないだろ? すいません。こいつ酔ってます」
「でもモツを食べないっていうのは、人生の半分を損してますよ」
「そうそう。さっき食べたこと無いっておっしゃってましたけど、食べたことのないものをどうしてきらいだと判断できるんですか?」

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「レバ刺し最終試食会の夕べ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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